犬ゾリで快調に前進するアムンセン隊

アムンセン隊はデポ作戦を2回にわけてやることにし、第1次デポ作戦にはアムンセン隊長以下4人が2月10日に出発した。ソリ3台、犬は各6匹で合計18匹。デポ用の食糧は合計約750キロ。ソリ1台あたり全荷物の重さ約350キロ。全員スキーをつけている。

出発はスコット隊よりも十数日もおそいが、犬ゾリのスピードは圧倒的だった。少ない日でも27キロ、多い日だと40キロ。しかも犬たちに何の支障もなく、わずか4日目の2月14日にはもう南緯80度に到達した。ここに最初の「80度デポ」をつくって帰り、荷のなくなった犬ゾリは、なんと1日最高100キロの速さで、しかも時には人間がソリの上で寝そべって走った。これはソリ旅行としては「猛スピード」である。途中1泊しただけで、15日の夜にはフラムハイムに帰着していた。

つまり、スコットのデポ隊は12人が往復1カ月もかかって南緯79度29分までだったのに、こちらは4人で往復たった5日間のうちに南緯80度へ第1のデポをつくったことになる。

犬ゾリ走行に大きな自信を得たアムンセンは、つづいて2月22日、第2次デポ作戦に出発した。こんどは8人でソリ7台、犬は合計42匹。つまりアムンセン以下全隊員9人のうち、料理係1人だけが留守番に残って出発したのだ。いささか荷を積みすぎたのと、すでに零下45度にもなる低温でさすがの犬も弱ったことで、スピードは第1次デポ作戦ほど出ないが、それでも3月3日には南緯81度に達した。

地図上の南極に立てたピン
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最初のデポにアザラシ肉を追加貯蔵

ここに「81度デポ」をつくると、8人のうち3人は基地へ帰り、5人はさらに南進したが、犬のやつれが目立ち、3月8日の南緯82度までがやっとだった。できれば83度までと考えていたアムンセンも、重すぎた荷と寒すぎとですっかりやせてしまった犬たちを見て断念し、ここを「82度デポ」地とした。帰りの旅ではついに8頭の犬が力つきて死んでしまい、基地についたのは3月21日だった。

しかし、アムンセンは重ねて第三次デポ作戦を実行する。これはデポをもっと南に作るのではなく、南緯80度の「80度デポ」にさらに1.1トンのアザラシ肉を追加する目的だ。本番の極点攻略行にさいして、ここで犬が腹いっぱい食うことに、作戦上の重要な意味があった。

3月28日、この探検で初めて極光(オーロラ)を見る。

第三次デポ作戦は、3月31日から4月11日にかけて7人が犬ゾリ6台で実施したが、アムンセン自身は今回は基地に残っていた。