「政府の対応に嫌気がさした」という新聞記者の言葉
6月11日「Nスタ」は、「東京など“宣言”解除検討…解除は妥当?」という内容を報道した。6月10日以降、私は「モーニングショー」には出ていない。見解を語るのは、「Nスタ」と「日曜スクープ」がメインになった。6月20日に期限を迎える緊急事態宣言について、東京・大阪などが宣言解除の方向で検討に入り、解除後は「まん延防止等重点措置」へ移行する案が出ていた。
まん延防止措置になった場合、緊急事態宣言とどう違うのか?
大きく違うのは飲食店の対策で、例えば緊急事態宣言の場合は、時短と休業の要請・命令を出すことができるが、まん延防止措置の場合には、時短の要請・命令はできても休業要請はできない。命令違反への罰則も、緊急事態宣言の場合には30万円以下だが、まん延防止の場合には20万円以下と少し緩くなる。緊急事態宣言を解除して、まん延防止に移行すれば、国民も少しはほっとするだろう。
ただ、ほっとしていい状況には到底ないのに、世の中に誤解を招かないか、と私は危機感を抱いた。「政府の対応に嫌気がさした」という旧知の新聞記者の言葉を思い出しながら、本番に入った。
感染状況が増加傾向なのに緊急事態宣言を解除
「解除しても大丈夫か?」という井上アナのふりに私は、「直近の東京都の新規感染者数の7日間平均は391.7人。前回の緊急事態宣言解除時より約100人多い。解除予定の10日前の陽性率も、約1ポイント高い。前回も早い解除の結果、数日でリバウンドしたが、今回はさらに早過ぎる。加えてインド型の拡大もある。つまり、解除などできるはずがない。すぐに緊急事態宣言に逆戻りになり兼ねない。解除は不可能です」と解説した。
2日後の6月13日「日曜スクープ」は、私と分科会メンバーの小林慶一郎氏がゲストで、「1週間後“緊急事態宣言解除”か? 東京でリバウンド兆候も五輪直前『インド型』置き換わりの恐れ」がタイトルであった。この時期の解除について、小林氏はこう説明した。
「前回は感染が増えていく局面で解除した。今回はおそらく、感染が増える局面では解除しないんだろうと思います。感染者が減っていく局面で解除する。そこが違います。それからもう1つ違うのは、ワクチンが相当、高齢者には打たれているので、感染者が増えても重症化する人の割合が減るのではないか。希望的観測ですが、そう思います。
さらに、東京の医療のキャパシティー、要するに確保病床の数ですが、これも前回に比べて倍くらいに増えているはずです。特に重症者用病床が増えてます。この2つの良いニュース、ワクチンで重症者が減ることと、重症者用の病床が増えていることで、医療の対応能力が上がっています。ですから、医療が逼迫して大変な状態になるという可能性は少し下がってます。
ただ、インド型で、また全然ひっくり返ってしまう話かもしれない。リスクは、おっしゃる通り、非常に高い状況であることは間違いない」
私は、「前回は感染が増えていく局面で解除した」という小林氏の何気ない一言を聞き、分科会が増加局面を認知しながら解除していたのだと知った。