指名本数による「ナンバー」という名誉
「フォロワーへ 私の友達が無料でクイック連れて行ってくれるらしいのですが、行きたい方いませんか? ちなみに今日で、場所は歌舞伎町です。いたら私にリプもしくはDMください。その子につなぎます。担当ホストにただ本数つけてあげたいだけの子なのでいい奴です……」
これは2021年10月31日にツイートされたものである。このように客がSNSや友人経由で他人に「奢る」ことで本数を稼ぐ事例が近年では起きている。さらに、歌舞伎町の路上で客が道ゆく女の子に声をかけて、「本数つけたいのでキャッシャー(レジ前)に一瞬でいいので来てくれませんか?」と声をかけて本数をつけるケースも存在している。指名本数によるナンバーという名誉に加え、本数バックや目標バックなども存在する。本数の記録は持てるならできるだけ多くもっておきたいという考えのホストが最近は多い。
指名本数は元来、売り上げだけでなくより多くのお客に愛されているバランスのいい接客能力の高いホストという評価軸のひとつだった。しかし、こうしたチートともいえる記録の伸ばし方を実践するホストが増えたことで、その意味を失いつつある。
ホストクラブで年間毎月1000万円以上を売り続け、指名本数も最大150本近くの記録を保持する、歌舞伎町でも上位数パーセントに入る売れっ子ホストに話を聞いた。
「一番使うお客様で月200~250万円くらい」
「月間指名本数700本とかやめてほしいよね(笑)。俺は本気でやって150本。それ以上は無理。一回本数にこだわって頑張ってみたけど、かなりキツいと思った。それでもグループの年間のランキングには入るから、ホストの限界はそのくらいじゃないかな。俺は指名で来るお客様が30人くらいいて、毎日来る子から月末だけの子を合わせて毎月100本前後。そこから頑張って150本。売り上げはあおったらどうにかなるけど、本数ばかりはどうにもならないと思ってたらこんな売り方も増えてきて……」
近年の歌舞伎町バブルに関してはこう述べている。
「俺はイベント月じゃなければ、一番使うお客様で200万~250万円くらい。そのほか100万以上使うお客様が4人。残りの数十万使うお客様で1000万の数字をあげているんだけど。イベントとかで500万ならまだしも、常時その金額を使い続けられる子が増えてきて怖いという感覚はある。特にぴえん系女子には無理する子が多い。1000万とか一人の子に『使うよ!』って言われたら怖いもん。断っちゃうかも」
別の売れっ子ホストも自分の売り上げに対して一人が使う金額が3割を超えないように気をつけているという。「ある程度の売り上げを自分一人で支えているとなると女の子が優位になってしまう。そこをコントロールすることも含めて自分の仕事」という内容の発言をしていた。
こうしたホストがいる一方で、ほぼ一人の客で売り上げを立てている一本釣りホストや、売り掛けに失敗して“飛ぶ(逃げる)”ホストもいる。この売り掛けという制度が、ホストたちの稼ぎを暴騰させる一面もあるのだ、が。