「夫に威張られたくないから結婚したくない」

「結婚してから彼を実家に連れていったんですが、彼はすっかりうちの両親やきょうだいと仲良くなって……。うち、田舎だから畳の居間なんです。昼食後、彼は親に勧められるままに居間でごろんと横になって昼寝していました。くつろいでいる感じでしたね。『こんなに安心して昼寝したのは初めて』とあとで笑っていた。そういう意味でも結婚してよかったのかなあと思います」

昨年来のコロナ禍で、サワコさんは在宅で仕事をしていた時期もあるが、彼は仕事上、通常と変わりなく出社していた。自宅にいるからといって彼のために食事を作ったこともない。彼もそれを望んではいなかった。

こういう結婚生活をうらやましく思う人たちもいるようだ。私がこの話をしたところ、20代後半から30代の女性たちから「そういう結婚ならしてみたい」という声を多く聞いた。

「私も結婚したくないと思っているんですが、一番大きな理由は夫となった人に威張られたくないから。今どきの同世代の男性は、前の世代より優しいし男女平等の感覚もあると思われがちでしょう。でもやっぱり嫉妬や独占欲が強い。私の前の彼は、つきあっているときは優しかったし、私の意見もきちんと受け入れてくれたけど、いざ同棲を始めたら急に支配的になった。だから即、同棲解消しましたけどね」

チホさん(34歳)はそう言って眉間にしわを寄せた。1年ほどつきあっていた同い年の彼と同棲に踏み切ったのだが、同じようにフルタイムで働いているのに彼は毎日、彼女の手作り料理を望んだ。洗濯も掃除も彼女が「ひとり暮らしのときは自分でやっていたのだから」とついこなしてしまった。彼はそれをいいことに家事を押しつけたあげく、折半するはずの生活費もろくに出さない。性的な関係においても、彼女がしたくないと言うと彼はあからさまに不機嫌になった。

「ひとりの人間同士の愛と信頼」だけで成り立つ結婚

「私の片思いから始まった恋愛だったこともあって、結局、彼は私をなめてかかっていたんだと同棲してみて初めてわかりました。相手を尊重できない関係を続ける理由はないので、3カ月で私は逃げたんです」

2年前のその一件以来、彼女は結婚したいという思いを失った。ともに生活していくことで自分の負担が重くなり、彼に自尊心を傷つけられるくらいなら結婚などしないほうがましだと思うようになったという。

「周りを見ても、人として信頼し合っている、いい結婚だなと思える例がなくて。もっとお互いを思いやりながら、ともに生きていくことはできないんでしょうか」

共に生きていく「共生婚」が、必ずしもいい結婚かどうかはわからない。ただ、自分のしたいような生活をしながら、信頼できる人とともに生きていくという意味では、うまくいけば理想的ではあるだろう。そのためにはふたりとも精神的にも経済的にも自立していることが必要だし、ひとりで生活できる術も身についていたほうがいい。相手に対して何かしてほしいと要求しない。その上で、共に暮らして共に生きる気持ちだけでゆるくつながっていく。途中で子どもがほしいと思えば軌道修正すればいい。

結婚するときがお互いの気持ちの絶頂期で、あとは愛も優しさも減っていくだけ。そんな結婚を見聞きするにつけ、「結婚」そのものへの考え方をもっとゆるめたらいいのではないかという気がしてならない。「共生婚」は、性役割を超えた、ひとりの人間同士の愛と信頼だけで成立する結婚なのかもしれない。

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