マンション管理員は住人のさまざまな顔を目撃している。マンション管理員の南野苑生さんは「とても愛想のいい3世帯家族が、深夜2時にとつぜん引っ越したことがあった。『夜逃げ』の理由は、意外なものだった」という――。(第3回)

※本稿は、南野苑生『マンション管理員オロオロ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

マンション
写真=iStock.com/Torsakarin
※写真はイメージです

管理員を苦しめる「マンションの3大トラブル」

マンションの3大トラブルというのがある。一に無断駐車、二にペット、三に生活騒音と続くのだが、これは今後も集合住宅の永遠のテーマとなるだろう。

来客用の駐車スペースが2台分しかない「泉州レジデンス」では、新理事たちが就任してから、外来者の駐車ルールが変わった。それまでは適当に空いているところへ、勝手に停めておいてよかった。多少、親切心のある住民さんは「ちょっとクルマ停めさせてもらうで」と管理員に断る。それが唯一のマナーだったのである。

だが、新しい理事たちは、部外者が買い物ついでのパーキング場として無断利用しているとして、「外来のクルマはすべて管理員室で手続きを経てから、一時駐車許可証をダッシュボードに置いてもらう」というシステムにした。たしかにそうすることで、常時停められていた無断駐車の回数がぐんと減った。

ある意味、新システムの勝利だった。ところが、5分や10分の短時間では、その手続きが面倒くさいと思うのか、勝手に停めている人がいる。こうなればマンション管理員としては新ルールに従って警告せざるをえない。

クルマに《無断駐車禁止》の貼り紙を貼ることにした。すると、無断で停めたくせに「なんでこんな紙を貼ったのか、そんなもん貼っていいと許可した覚えはない」などと文句を言いにくる人が出てきた。

貼るといっても、ワイパーに挟んでおく程度。しかも違反駐車に関しては「今後、管理員室を通さないクルマには厳重注意の貼り紙をします」と管理組合が宣言し、その旨、案内板や議事録で告知した上でのことなのである。