1年半で8組の管理員が辞めたというマンションがある。マンション管理員の南野苑生さんは「私の勤務していたあるマンションでは、理事長の要求があまりに厳しく、1年半で私を含めて8組の管理員が辞めた。当然のように時間外労働を求められたが、それを受け入れるしかない環境だった」という――。(第2回)

※本稿は、南野苑生『マンション管理員オロオロ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

怒り
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無理やり時間外労働を押し付けられている

管理会社のマンション管理員募集広告には「主管理員の勤務時間は9時~5時」と記されていた。ふつうに解釈すれば、昼の休憩1時間を除けば、実質労働7時間と考えられる。

ところが、「グラン・サルーン江坂」の主管理員たる私の勤務実態はといえば、朝7時に館内の巡回を開始し、公園の掃除・広場の粗ゴミを拾い回り、駐輪場の乱れた自転車を整理し、徒長枝とちょうしがあればそれを摘み、定期的に元浄水槽だった地下の水のたまり具合のチェックなどなどであり、実質9時までの2時間はサービス残業ならぬ早朝サービスをしていることになるのである。

そして夕方5時以降となると、管球切れチェックをかねた巡回や、朝と同様の、乱れた自転車置き場の整理、ゴミ拾いなどをこなさなければならない。時間外に働かないとすべての業務をこなせないようにできているのだ。

この「グラン・サルーン江坂」、じつをいうと仲間内ではつとに悪名の高いマンションだったのである。その証拠に、歴代管理員たちの残した日報には、私が現在、行なっているようにしないと理事長のご機嫌がすこぶる悪い、とある。要は無理やりに時間外労働が押し付けられる環境になっているのだ。

「管理員はマンションの番兵や清掃人、草刈り人などではない」を掲げる管理組合があるとネットで知った。私個人は、時間内ならそれでも構わないと思っているが、所定時間外のそれはやはり願い下げだ。