経済回復に完全に出遅れた日本

2021年はウィズコロナの年でした。2020年初頭から世界に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルスでしたが、2021年に入っても、その猛威からまぬかれることはできませんでした。とくに「デルタ株」が瞬く間にまん延し、多くの国で感染者が急増しました。

しかし、図表2にあるように、そんな中にあって、ワクチンの接種が進んだことで、コロナの中での経済活動の復活も顕著になったのも2021年でした。米国では、実質GDPが年初の1~3月、4~6月に連続で6%台の成長を遂げ、7~9月は少し減速したものの、それでも2%の成長で、景気拡大が続きました(四半期のGDP成長率は、前四半期比での年率換算。一部は速報値)。

【図表】各国の2021年の実質GDP成長率

欧州では、通貨ユーロを使っている国19カ国からなるユーロ圏の数字を見ると、1~3月こそコロナの影響で1.2%のマイナスでしたが、4~6月は8.7%、7~9月は9.3%と大きく回復しています。英国でも同様のトレンドです。

中国は、秋以降、「共同富裕」の名の下に不動産業界などの締め付けを行った結果、経済成長率は鈍化していますが、それでも成長を維持しています。韓国、台湾、シンガポールなども、コロナの影響はあるものの2021年は成長をある程度取り戻した年でもありました。

その背景には、コロナウイルスの影響はなかなか消えないものの、ワクチン接種の進展とともに、飲食やイベントなどへの規制緩和の効果が大きかったと言えます。

それに比べ、日本の景気回復は大幅に出遅れました。上でみたように、米国、欧州、アジアの各国は2021年には、ある程度の成長を取り戻しました。しかし、日本の成長率は、1~3月期はマイナス2.9%、4~6月はプラスに転じたものの、2.0%、そして7~9月は、8月に東京で1日あたり6000人ほどの感染者が出たデルタ株の感染の急拡大により、GDPは再びマイナス3.6%(2次速報値)といった状況です。

日本でのワクチン接種は、2月ごろから医療従事者から始まり、その後、高齢者、そして多くの国民への接種と進みましたが、欧米各国に比べて数カ月の出遅れが響いたのです。今では接種率は、欧米並みかそれ以上となっていますが、出遅れが経済回復を阻んだと言っていいでしょう。