日本経済を復活させたアベノミクス

白川前日銀総裁の残した低迷した日本経済に対して、黒田日銀総裁はアベノミクスの名のもとに異次元の金融緩和を実行した。アベノミクスによって、13年以降は実質実効為替レートが下落し、500万人の雇用を生み出す結果となった。まさにアベノミクスが日本経済を復活させたのだ、ということを知ってほしい。

どこまでの円安が日本経済のためになり、どこからが行きすぎとなるか知るためには、ただ時系列での実質為替レートが前より高いか低いかを見るだけでは十分でない。前が正常値であるとは限らないからである。

慶應義塾大学の野村浩二教授が、ハーバード大学のジョルゲンソン教授ほかとの共同研究で、実際の各産業別の価格データを使って、円高によって何%の価格ハードルが日本企業に課されていたかを示す有益な研究がある。アベノミクスの始まる前年11年末には、各産業は全面的に円高のハードル負い、それが平均的に約37%にまで及んでいて、黒田日銀の金融緩和の後の15年ではそのハードルがほぼ全面的に回復して、ごくわずかながら実質為替レートは円安――つまり日本企業への追い風となっていたという結果は、マクロ分析だけでは得られない貴重な政策資料である。

黒田日銀総裁は、21年10月下旬の記者会見で、実質実効為替レートが「若干」下落方向にあることを認めながら、今のところ心配はないと述べているが、妥当である。それだけでなく、実質実効為替レートの下落を無理にとどめたり、高めるような政策をとると、日本経済が、貿易上のわずかな利得は得ても、生産・消費の面で深い景気の谷に陥る恐れがあることを理解してほしい。

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