「メリークリスマス」と言ってはいけない

新年は年賀状の季節であるが、日本と米国を行き来していると、日頃の挨拶にも国民性の違いがあることに気づく。

電子メール。黄色の背景にPCキーボードと封筒。
写真=iStock.com/Vladimir Sukhachev
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米国では、クリスマスカードを送る習慣がある。近年は「メリークリスマス」と言わないで、「シーズンズ・グリーティングス(季節のご挨拶)」というカードが多くなっている。これは、民族や宗教の多様性への配慮だ。

確かにポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)の配慮は必要だ。しかし、受け取る立場からすると「雪の降るクリスマス・ツリーの光景」を想像することに比べると、「季節のご挨拶」だけでは味わいはなくなる。送る立場でも、何百と違った絵柄や写真の挨拶カードが陳列されているお店に出かけて、その中からカードを選ぶことに楽しみがある。

米国では出来合いのカードから選ぶのに対して、日本の年賀状は、心のこもった文章や家族の様子をお互いに伝える素晴らしい風習だと思う。特に年配の女性からの手紙は、こまやかな導入部が俳句の季語の役割に似た形で相手に繊細なイメージを与えてくれることが多い。

挨拶に関する日米間の差の特徴を述べると、他人との間柄を重視する日本では、皆と一緒に行動する新年や盆などの時季に合わせて、「年賀の挨拶」や「暑中見舞い」などの挨拶が重要となる。これに対して、米国では誕生日祝いが最重要である。