「ミドルになると自分の能力がある程度わかるから、どんどん謙虚になるんですよ。しかし、石橋を叩いても渡らないような法務部門の人ですら、採用面接になると『もっとアピールしてほしかった』と感想を漏らすものです。だから『自分にできるかわかりませんが』のような枕詞は不要。『全部やれます』と大げさにアピールするぐらいでちょうどいいんです」
内定が出るまでは何も決まってないので、どれだけ風呂敷を広げても構わない。話の膨らませ方を判断するのは面接官の仕事と考えていいだろう。ただし、「これができる」と公言して入社したら、口にしたことを完遂する義務があることは肝に銘じておきたい。
そして、気をつけたいのは、転職マーケットで評価される能力を持っていたとしても、転職を選ぶことが必ずしも正解とはかぎらないということだ。
「転職活動で内定が出ても、気に入らなかったら辞退していいし、現状よりよくならなければ今の会社のままでいればいい。選択肢は2つ以上持っておき、今の会社で働くことを基本路線にしながら、転職はセカンドチョイスにしたほうが安全です」(小林氏)
「年収アップを目指した転職は、成功例をあまり目にしません。それは年収を上げることだけが目的化すると、自分の方向性とは違うにもかかわらず、企業側のニーズに無理矢理あわせて転職してしまうからです。結果、スキルや経験が活かせないまま、入社後につらい思いをして長く続かない。たとえ転職して一瞬年収が上がっても、維持するのが難しいんです」(西尾氏)
自分を「何屋さん」とひとことで言える?
会社に残って収入を上げたいのであれば、昇進に活路を求めることになる。西尾氏は各クラスに求められるコンピテンシー(評価基準)を次のように示した。課長クラスは5~10名ほどのチームを率いて組織の結果を出すこと。部長クラスであれば、3年程度の部門の戦略を描いて目標設定すること。さらに人材育成も必須の役割だ。役員・本部長クラスになると、5年以上の組織のビジョンを示して、戦略を示すことが求められる。
昇進するためには、これらの能力を磨きながら、企業内において自分の価値を高めなければいけない。そのために重要なのは、「会社のミッションを理解したうえで、自らのミッションを明確にすること」と西尾氏は説く。
「世の中にどのような価値を提供するかというミッションをどの企業も持っています。訊ねられて答えられない社員もいますが、ミッションが見えないと提供する価値を増やしにくい。ミッションを実現するために社員としてすべきことや、多くの価値を提供するやり方が自分の中で整理されていると、理念と行動が一致するため、自ずとパフォーマンスも上がっていきます」