整理解雇回避の努力にしても、まず希望退職を募集したのか、役員の賞与や報酬をカットするなど経費削減をしたのか、新規採用を減らしたり、解雇対象者の配置転換を検討したのかなど、段階を踏まなければならないのである。

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労働審判制度の流れ

一方、2006年から個別の労使紛争を解決するために「労働審判制度」という新制度がスタートした。3回以内の期日でまず調停を行い、それで解決しない場合は労働審判が行われ、審判に異議があれば訴訟に移る。

これまで労使紛争の訴訟は時間がかかり、労働者が泣き寝入りするケースが多かった。しかし、この制度では7割近くが調停で解決し、復職を希望しない場合も和解金による紛争解決という選択肢があるので、労働者にとっても朗報だろう。

申し立てから解決までの平均日数が75日弱と短期間で済むので、年々件数が増えている。09年は11月までに全国で3141件と、対前年比1.5倍の伸びだ。現在、この制度で整理解雇をめぐる紛争は少ないようだが、今後は増える可能性もある。

労働者派遣法の規制強化改正案が成立すると、原則的に登録型派遣が禁止され、また有期雇用も規制される可能性がある。そうなれば正社員は増えるが、雇用調整弁がなくなって、逆に整理解雇の要件が緩和される可能性もある。

過去、小泉政権下で規制緩和が議論されたとき、一定の金銭支給によって雇用終了が認められる「解雇の金銭解決制度」を法改正で導入するという動きもあった。今後は正社員だからといっていままで通り、法によって守られるとは限らないかもしれないので油断は禁物だ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=吉村克己)