子供がコントロールできるのは「努力」だけ
——無条件の愛ですね。
一方、親の中には「条件付きの愛」しか示さない人もいます。子供が成功したら愛情を注ぐ親です。そうした親は、子供の試験の結果や勉強の成果を「成功」の尺度として捉えます。でも、私は子育てを「アウトプット・結果」でなく、「インプット・努力の量」だと考えます。子供が自分でコントロールできるのは「インプット」だけだからです。
遺伝や持って生まれた脳はもちろん、運の良しあし、ほかの子供がどれだけうまくやるかといったことは子供のコントロール外の問題です。子供がコントロールできるのは「努力」、つまり「インプット」だけです。
私は、いつも自分の子供たちにこう言ってきました。「精一杯頑張れば、結果など関係ない。ベストを尽くすことが勝つことだ。ほかの子供たちのことなど、どうでもいい。他者との比較は『結果』重視につながる。自分の力を出し切ることが大切だ」と。
親が犯す最大の過ちは、子供の「結果」にこだわることです。子供がコントロールできない「結果」を求めることは、子供にとって過酷で誤った評価の仕方です。
——自分を省みず、子供だけを責める親がいるのはなぜでしょう?
日本社会では、親と子供の間に緊張関係があるようですね。子供の「結果」が芳しくない場合、親子が互いを責め合うのではないでしょうか。でも、家族は「個人」対「個人」ではなく、「共同体」です。子供の成功は「家族の成功」。失敗も「家族の失敗」です。誰か1人の失敗ではありません。現代社会で子供を育てるということは「チームゲーム」であり、協働なのです。
まずは家族の結束が必要です。次に必要なのが、人生の宝くじに外れた家族が挽回できるように公正なチャンスを与えることです。「機会・チャンスの格差」を縮めるような政策です。そうすれば、誰もが当たりくじを引くことができ、家族全員が勝利を手にできます。(続く)