現代自動車、サムスン電子、LG化学も…
債務残高の増加などを理由に、韓国の個人金融ビジネスのリスクを取りたくないと考える海外の金融機関は多い。非金融分野でも、韓国での事業運営を慎重に考える企業が増えている。例えば、米GMは販売市場としては韓国を重視しているが、韓国での生産に慎重な姿勢を強めている。
一方、韓国の企業は、海外直接投資を積み増している。足許ではベトナムに加えて、インドネシアに直接投資を行う韓国企業が多い。現代自動車はEV完成車工場を建設し、自動車部品や金融機関も進出している。また、米国にてサムスン電子は最先端の半導体工場を建設する。LG化学などは米国、欧州、東南アジア新興国などで車載バッテリーの生産体制を強化し、成長期待の高い市場への進出をより重視している。
なぜ企業の“韓国脱出”が増えているのか
逆に言えば、国内外の企業にとって、韓国で成長を目指すことが難しくなっている。その最大の原因は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済政策だ。文政権は、重要な支持基盤の一つである労働組合の意向を重視して経済政策を実施した。その結果、企業は事業運営の効率性を高めることが難しい。
2022年1月に施行が予定されている“重大災害処罰法”はその象徴といえる。重大災害処罰法は、死者が1人以上発生する、あるいは負傷者の発生を重大災害と定め、企業の代表取締役などに、下請け業者を含む事業の従事者と、材料や製品などを利用する市民を保護する責任を課す。
重大災害処罰法に関して、韓国内外の企業からは対応しなければならない範囲が非常に広く、どのような取り組みを行えば経営者の責任が問われないかも明確ではないとの懸念が表明されている。それに加えて、2021年9月に施行令が公表されてから施行までの期間も短い。韓国で事業を運営する企業にとって重大災害処罰法の遵守は難しく、企業の事業運営にかなりの負担が生じるとの懸念は強いようだ。しかし、文政権はそうした企業サイドの要望に応え、労使の協調が目指されやすい環境を整備する姿勢を示していない。