日本の最大の資源は歴史

——時間?

【西野】歴史とも言い換えられます。清水寺をハリウッドはつくれない。つくったところで、それは偽物の清水寺で、そこに流れた時間までは再現できません。

だから、時間を味方にしていく。世界戦では時間を味方にしていくしかないですね。これは日本の最大の資源。歴史が浅い国はいっぱいあるんで、そこそこマウントを取れます。

たとえば、歌舞伎には400年以上の歴史がある。こんなに長く続いているエンタメなんて、なかなかない。そういったものを味方にしていく。

歌舞伎のビジネスモデルをアップデートする

——来年1月からは市川海老蔵さん主演の新作歌舞伎「プペル~天明の護美人間~」が控えていますね。歌舞伎に取り組まれてみて、現状をどのようにご覧になっていますか。

【西野】コロナの影響は大きく受けていますね。歌舞伎座は今年8月に再開したのですが、客席の稼働率45%でも客席が埋まらなかった。歌舞伎に限らず、年配の人をターゲットにしたエンターテインメントは厳しい状況にあるようです。

——歌舞伎もアップデートしていかないといけないでしょうか?

【西野】当然、若いお客さんがくるように仕向けていかないといけない。どんな舞台もそうですが、お客さんの膝が悪くなったら劇場には足を運べなくなるので。年配のお客様も大切にした上で、若い人を常に入れていかないといけません。

新作歌舞伎『プペル~天明の護美人間~』。西野氏は原作・脚本に加えて、空間・美術演出を務める。
新作歌舞伎『プペル~天明の護美人間~』。西野氏は原作・脚本に加えて、空間・美術演出を務める。©松竹株式会社

当たり前のことを堂々と言っちゃてごめんなさい(笑)。

でも、それもあって、海老蔵さんは「えんとつ町のプペル」に声をかけてくださったのだと思います。本来、歌舞伎は新しいものをどんどん取り入れていくメディアだったので、海老蔵さんがやられていることにはすごく意味があるんだろうなと思っています。

だからとにかくいい作品にして、できれば配信もやっていきたい。多くの人に、まずは見ていただかないといけないので。そして、世界に持っていく。こうした新しいビジネスモデルを、西野が言うならのってみようと思っていただけるように信頼を獲得することが、僕の宿題だなと思っています。

(構成=プレジデントオンライン編集部)
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