クリエイティブとお金の話は分けられない

——海外では長期間かけて回収していくという考え方になっているのですか?

【西野】シルク・ドゥ・ソレイユの「O(オー)」とか「KÀ(カー)」だと、制作費が100億円です、160億円ですとかっていう話なので。いったい何年かけて回収するんだと。

これだけの予算をかけてつくるなら、どこに建てて、チケット代がどのくらいで、ランニングコストがどれくらいかという計算を徹底的にしないといけない。経営と一緒です。エンターテインメントに一流のビジネスマンがしっかり入っているというのが大きい。そこがとても大事ですね。

日本はクリエイティブとビジネスを分けすぎている。クリエイターがお金の話をすることは超タブーになっています。だけど、そんなの日本くらいです。クリエイターがお金の話をしていかないと世界では確実に勝てません。

西野亮廣氏
撮影=森本真哉

オリジナルを「コピー不可なもの」と再定義しよう

——これから日本が海外でお金を稼いでいこうと思ったら、どんな分野が強いと思われますか?

【西野】月並みですが、エンタメと食、スポーツ、ゲームとかは強そうですね。

——ビジネス全般を通じて、日本が世界で戦うときに意識したほうがいいと思われることはありますか?

【西野】「オリジナル」の定義を変えないといけないと思っています。

ネットで世界がつながって、いい商品、いいサービスは、あっという間にコピーされるようになりました。エンタメなら、AmazonプライムやNetflixでつながって、完全に世界の作品と同じ商品棚に並ぶ。こちらが望んでいなくても、勝手に世界戦が始まっている。

そのときに僕たちが見直さないといけないとのは、「オリジナル」の定義で、これまでの「オリジナル」の定義は、なんとなく「0→1」だったんですよ。自分の中からゼロから生み出したアイデアを「オリジナル」と呼んでいた。ですが、翌日には中国が50億円とか、100億円かけてコピーしてしまう。すると世界の人にとっては、それは中国のアイデアだととらえるわけです。

なので、オリジナルというのは「自分の中からゼロから生み出したもの」ではなく、「コピー不可なもの」と再定義する。じゃあ、コピー不可なものは何なのかと考えたときに、僕は「時間」だと結論しました。