いまJAL再建の根幹をなすのが、「意識改革」と「部門別採算制度」の2本柱だ。これこそ、稲盛経営の真髄をなすものだ。大西曰く「稲盛会長が経営指導で、われわれが実行部隊」である。
意識改革の「バイブル」となっているのが、「JALフィロソフィ手帳」だ。このJALフィロソフィは、京セラフィロソフィをベースに、JAL社員の手でつくり上げられたものだ。
まず10年の6月から延べ17日間にわたって、リーダー教育が実施された。対象は大西以下の役員全員と、部長クラスの経営幹部約50名。稲盛会長も数回にわたって、講義を行った。
「稲盛会長から、社員一人ひとりの意識や考え方、価値観が、揃ったところから出発することが大切だということを、繰り返し言われていた。そこで自分たちの手でつくろうと考えた」(大西)
こうした問題意識を持った大西が、リーダー教育を受けた人の中から約10名を指名し、JALフィロソフィづくりが始まった。
メンバーは10年の8月からフィロソフィづくりに着手し、12月に完成させた。「あの期間、メンバーは土日もなかった。私は今もありませんが(笑)」と、大西は振り返る。会社更生法申請からちょうど1年目に当たる11年の1月19日に、新たな企業理念、JALフィロソフィ、赤い鶴が翼を広げるロゴ「(通称)鶴丸」の3つが、社内に向けて発表された。