同月には「JALフィロソフィ手帳」が出来上がり、2月初旬からグループを含む全社員に配られた。10年の5月には、意識改革を推し進めるために「意識改革推進部(当時、準備室)」も新設された。自分たちのフィロソフィだからこそ、意識改革推進部のメンバーが教材づくりから、研修の講師まで行う。進行役は、現場の人間が多い。機長、客室乗務員(CA)、整備士などが、意識改革推進本部に来て、進行役を務める。
意識改革推進部部長の野村直史が、その狙いを次のように説明する。
「普段本社のデスクで仕事をしている人が、フィロソフィを学びましょうと現場に語りかけても、心に響かないと思いました。昨日まで、一緒にフライトしていた機長、CA、あるいは空港で一緒に働いていた整備士が、一緒に時間を共有して議論を進めてくれれば、受け手も身近なものとして一体感を感じてくれる。そういうことは、破綻前のJALの教育にはなかった。バラバラだったんです」
「JALフィロソフィ手帳」は、「(第1部)すばらしい人生を送るために」「(第2部)すばらしいJALとなるために」の2部構成で、全部で40の目標が掲げられている。第1部が人生に対する心構えなど、人生哲学に関するテーマが多く、第2部はどのような姿勢で仕事に取り組むかという、仕事哲学である。第2部第2章には、稲盛哲学をシンプルに言い表す「売上を最大に、経費を最小に」し、「採算意識を高める」とある。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時
(小倉和徳、室川イサム=撮影)