「こんな流れになってしまった」と議長が涙の謝罪

11月13日夜(日本時間14日早朝)、会期が2日延長されたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)がようやく閉会した。今回は英国が議長国のため、会議はスコットランドのグラスゴーで開かれていた。議長を務めた英国のシャーマ前ビジネス相は、最後の本会議で成果文書「グラスゴー気候協定」を採択するときのスピーチで、「こんな流れになってしまった」ことを謝罪し、無念の涙に声を詰まらせた。

2分30あたりより

すると、それに気づいた参加者の拍手が沸き起こり、満場の拍手は、しばらくしてシャーマ議長が気を取り直し、「先に進めなければなりません」と言うまで続いた。最近、そもそもCOP自体が茶番という評価をよく聞くだけに、シャーマ議長の真面目そうな風貌も相まって、私にはこのシーンが茶番の印象にダメ押しをしてしまったように見えた。

さて、翌日の独主要メディアは、このCOPの成果文書採択の話題で満載。Fridays for Futureのグレタ・トゥンベリ氏や、国際環境活動グループのコメントなどを用いて厳しい批判が展開された。一方、会議を議長国として成功に落とし込みたいジョンソン英首相は、「合意は大きな前進」と評価。また、EUの欧州委員会は「パリ協定は維持された」としてメンツを保つことに終始した。ただし、彼らにしてみても、「まだ十分でない」ことだけは認めている。

2021年11月5日、イギリスのグラスゴーで開催された国連気候変動会議COP26の会場周辺で、世界のリーダーに行動を求める「Fridays for Future」のデモ行進を行い、参加者に語りかけるスウェーデンの気候活動家グレタ・トゥンベリさん
写真=EPA/時事通信フォト
2021年11月5日、イギリスのグラスゴーで開催された国連気候変動会議COP26の会場周辺で、世界のリーダーに行動を求める「Fridays for Future」のデモ行進を行い、参加者に語りかけるスウェーデンの気候活動家グレタ・トゥンベリさん

石炭火力発電所の「段階的な廃止」にインドと中国が反発

では、いったいシャーマ議長の言った「こんな流れ」とは、どんな流れだったのか? 具体的に言うと、最初、採択されるはずだった石炭火力発電所の「段階的な廃止(phase out)」が、「段階的な削減(phase down)」にすり替わってしまったことを指す。議長国の英国が提出していた文書案の採択まであと数時間というところで、インド代表が猛烈に反発し、そのインドを中国が支持したため、結局、変えざるを得なくなったのである。そもそも、中国とインドはCO2の大量排出国だから、彼らが首を縦に振らないことを言っても意味がない。

やはり大量排出国である米国からはバイデン大統領が出席し、積極的な姿勢を見せたが、彼の場合、帰国してから何を批准できるのか心もとない。また、ロシアはというと、プーチン大統領が欠席した。ちなみに、世界のCO2排出は、この4国で全体の半分を超えている。

言うまでもないが、現在、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えるため、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることが、世界共通の大目標となっている。ただ、この運動をよくよく見ると、「温暖化を止めなければならない」という目標は同じでも、主張や理由はさまざまだ。