脱原発を押し通し、石炭火力発電所は2038年ではなく、すぐにでも止めろとか、すでに完成しているロシアのガスの海底輸送パイプラインの運開も中止しろなどと主張してきた緑の党だが、与党になって施政を担うとなると話は別だろう。

現実的なエネルギー政策への転換を迫られている

折しも、現在、エネルギーの高騰で、すでにガソリン代や暖房の燃料費が天井知らずになっており、各電力会社も電気代の値上げを告知し始めた。ガス不足が原因だとしてプーチン大統領に罪を着せようとしているのが緑の党だが、真の原因は、原発を減らし、石炭火力を減らし、しかし、それを再エネで代替できず、エネルギー供給のバランスが崩れ始めていることだ。ドイツ政府は長い間、周辺国との連係線があるから安全供給は保証されていると主張してきたが、今やその理論が崩れかけている。

しかも、問題は値上げだけでなく、今年末で原発6基のうちの3基を止めれば、深刻な電力不足が起こるかもしれないことだ。最悪の場合は停電で、ドイツのような産業国にとっては由々しき事態だ。つまり、緑の党も、あるいはやはり脱原発と脱石炭を主張してきた社民党も、与党になった途端に停電など引き起こさないためには、現実的なエネルギー政策に転換しなければいけなくなった。

そして、実は、その現実的なエネルギー政策を前々から主張し、環境NGOに叩かれていたのが自民党だ。つまり、次期政権の政策では、自民党の主張が有力になってくるのではないかという予測が、協議内容は極秘にされているといえども、染み出してくるのである。

「飼い犬に手を噛まれるかもしれない」ジレンマ

そうなると、緑の党にとってまずいのは、これまでスクラムを組んできた環境グループの存在だ。彼らの過激さは、はっきり言って穏和な日本人には想像できない。小泉進次郎前環境相が前回のCOPから帰ってきた途端、実現不可能と思われるような脱炭素政策に舵を切り替えたのも、おそらくCOPで激しい攻撃にさらされ、大恥をかかされたのに懲りてしまったこともあるのではないか。日本の大企業は時たまそういう攻撃に晒されることもあるが、政治家は慣れていない。

ちなみに日本メディアが好んで取り上げる「化石賞」は、ドイツでは一度も聞いたこともない。これは、オブザーバーとしてCOPに出席しているNGOがフロアでやっている悪ふざけで、本気にすることはないのだが、ウブな小泉氏には大いなるショックを与えてしまったようだ。