そして、通常の証券口座なら、ずっと「塩漬け」にして100万円に戻るまで待って引き出すなら税金はかかりません。

ところがNISAは、5年なり10年なりで、損をしていても必ず引き出して損を確定しなければなりません。

たとえば、100万円の株が50万円になってしまった場合、5年後に50万円だったら、その株は、50万円で買われたと言うことになります。

ですから、そのまま「塩漬け」して、やっと買い値の100万円になったから売ろうとすると、50万円の利益となり、なんと約10万円の税金を支払わなくてはなりません。

NISAの口座に移し替えた場合も、もし5年間、50万円のままだったら、同じように100万円になった時点で約10万円の税金を支払わなくてはならなくなります。

つまり、NISAは買った投資商品が値上がりすれば税金ぶんが儲かるが、値下がりすれば増税になってしまう商品なのだと言うことです。実質的な利益はゼロなのに、税金だけを引かれるという理不尽なこともありうるのです。

株が右肩上がりに上がっていくならNISAは有効かもしれませんが、株価が下がっていけば余計な税金わ払わなくてはならなくなる。

国や金融機関は損をしたときのリスクについてはあまり説明をしてくれませんが、NISAで買ったものが値下がりすると、後々払う必要のない税金を払わせられる可能性があるということは覚えておきましょう。

教育資金を投資商品で貯めてはいけない

2018年1月から、「つみたてNISA」が始まりました。

通常のNISAは、年間120万円以内ならまとまった投資ができますが、つみたてNISAは、投資商品を毎月コツコツと買っていくというもの。

上限額は年40万円、最長20年間非課税で運用でき、投資対象商品は金融庁が定めた基準を満たす投資信託とETF(上場投資信託)です。

積み立てた資金はいつでも引き出して使えます。また、年間40万円以内ならボーナス月の増額も可能です。

月々少額の投資で、家計の負担にならずに長期間運用でき、さらに、非課税の複利効果でお金が増えやすいというのがウリで、老後はもちろん、子どもの教育費を貯めるのに向いているといいます。

けれども裏を返せば、投資額に上限があり、商品ラインナップが限られており、通常の証券口座との損益通算ができないという、ほとんど自由度がないがんじがらめの制度です。

しかも、投資商品である以上、目減りするリスクも当然あります。しかし、パンフレットにはどこにも目減りするリスクの詳しい説明は書かれていません。

例えば、二人の子どもを大学に入れるため、5年後に教育資金として300万円が必要なので、つみたてNISAで準備するとしましょう。

荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社)
荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社新書)

銀行の積立定期で月5万円ずつコツコツ積み立てしていけば、5年後には確実に300万円を準備できます。けれど、その5万円を投資に回したら、必ず300万円になるという保証はありません。

運用が上手くいけばよいですが、株価が暴落して買っていた投資信託も値下がりしてしまったり、円高で目減りしてしまったら、大学には一人しか行けないということにもなりかねません。

さらにご丁寧なことに「ジュニアNISA」(未成年者少額投資非課税制度)という制度もあります。こちらは年間の非課税枠が80万円、5年で400万円、18歳までは払い出し不可です。

いまの経済の先は、まったくわかりません。

こんな、不確定な不安定な時代に、あえてリスクを抱える必要はありません。

そもそも投資というのは、経済が右肩上がりになってよくなっていく時にするものです。一寸先もわからないのに投資をするということは、ギャンブルに近いのではないでしょうか。

※編集部註:初出時、書籍の内容をそのまま掲載していましたが、出版時より更新した内容を伝えるため、著者の意向により本文の一部を修正しました。(11月17日9時51分追記)

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