慎重さと積極性の相乗効果を意識する
前例踏襲病の人の中には、責任を取るのが嫌で新しいことを回避するタイプもいる。そういう人でも、日常の小さな変化を成功させるたびに自信が増して、責任への恐れが薄れてくる。やがて大きな変化にも積極的に取り組めるようになる。
損害回避性格の人でも、このような訓練を通じて積極性が少しでも生まれれば、むしろ先天的に持つ慎重さと後天的に獲得した積極性が相乗効果を発揮して、より魅力的な人間になるのではないだろうか。
普段は石橋を叩いて渡る人が、ここぞという場面で何かを言い出せば、熟慮の末のアイデアということで、みんなの信用も得やすいはずだ。
また、もともと身についている慎重な性格をプラスに生かし、変化に強いタイプの人とチームを組めば、アクセル役とブレーキ役がそろうので、相互に補完して大きな成果を生むこともできる。アクセル役の発案で成功したら、今度はブレーキ役がきちんとリスク管理して成功を維持する。ひとたび状況が変われば、成功体験にしがみつかず、アクセル役にがんばってもらうといった関係が期待できる。
このように、前例踏襲病の大きな要因である損害回避性格には、プラスの面もマイナスの面もある。損害回避性格を嘆くのではなく、マイナス面を抑えて、ここぞという場面でプラス面を発揮することが大切なのだ。そのためにも、自分の性格をしっかり把握しておくことが重要なのである。
(構成=斉藤栄一郎)