「欲しい人は世界中にたくさんいる」

しかし34GT-Rは、99年発表のモデル。まだアメリカの25年ルールをクリアしていない。それがなぜ、ここまで値上がりしているのか。国産スポーツカーをメインに取り扱う中古車業者は語る。

日産スカイラインGT-R R34
日産スカイラインGT-R R34(写真=Shadman Samee/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

「25年ルールが適用されれば、確実に値上がりするとわかっているからでしょう。株と同じですよ。それに、輸出先はアメリカに限りません。カナダは15年でOKです。同じ右ハンドルのイギリスやオーストラリアでも人気ですし、中東なんかにも出ています。ジャマイカではウサイン・ボルトはじめ、陸上選手にGT-Rの熱狂的ファンが多いことで有名です。欲しい人は世界中に結構いるんですよ」

この34型スカイラインGT-Rの中でも、250台限定モデルだった「Mスペック ニュルブルクリンク」の高騰はすさまじい。現在、価格を表示している売り物はないので相場は不明だが、最低でも3000万円することは間違いないという。新車時、630万円だった国産スポーツカーを、3000万円で買う人がいること自体、信じがたい。

前出の中古車業者は、1年ほど前、まさにその「ニュル」を販売したという。いったいどんな人が買ったのか。

「普通のクルマ好きのおじさんでした。日本人です。特に富裕層でもなかったと思います。その時はまだ2400万円でしたが、フルローンで買われました。120回均等払いだったと思います」

なんと、2400万円の中古車をフルローンで。

「危ない橋を渡っているように感じられるかもしれませんが、こういうクルマはもう作れませんから、値下がりすることはありません。リスクはないんです。みなさん、それをわかっているから買うんですよ」

価格は高騰しても国産スポーツカーにはそれだけの価値がある

思えば自分も、フェラーリやランボルギーニを、高いお金を払って買い続けているが、これっぽっちも危険だとは思っていない。国産スポーツカーが高すぎて危険に思えるのは、それがはるかに身近な存在だったから。身内が背伸びしているように見えるからだろう。

こういう高価な中古スポーツカーを買うのは、ほぼ確実にクルマ好きである。もちろん富裕層も多いが、クルマにまったく興味がない人が、純粋に投機目的で買ったという話は聞かない。

クルマ好きの富裕層が、半分投機目的で買うことは多いにせよ、それでもやっぱり買う最大の理由は、「所有してみたいから」。

一部のマニアックな国産スポーツカーは、その欲望を満たすだけの価値がある。だから高騰しているのである。

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