政治家の若返りが全然進まない――。今回の衆院選で大物議員の引退や落選が相次ぎ、世代交代が進んだ観もあるが、統計データ分析家の本川裕氏は「前回衆院選(2017年)の当選当時の衆院議員の平均年齢は54.7歳でしたが、今回は55.5歳(解散直前時は59.0歳)。閣僚の平均年齢はOECD諸国平均で53.1歳のところ、日本は62.4歳と35カ国中最も高い」。高齢政治家が多いことの弊害とは何か――。

衆院選で政治家は本当に若返ったのか?

今回の衆議院総選挙で大物議員の引退や落選が相次ぎ、政治家の世代交代が進んだ観がある。

まず、選挙を前に引退を表明し、出馬しなかった大物議員としては、大島理森衆院議長(75)、伊吹文明元衆院議長(83)、鴨下一郎元環境相(72)、川崎二郎元厚生労働相(73)、太田昭宏公明党前代表(76)などが挙げられる。河村建夫元官房長官(78)のように小選挙区で党の公認が得られず、引退を余儀なくされた議員もいた(党名を付さない場合はすべて自民党。以下同様)。

また、立候補したが、小選挙区で敗れた上、自民党「73歳定年制」で比例復活もできなかったため政界から去った有力議員としては、野田毅元建設相・自治相(80)、原田義昭元環境相(77)、山本幸三元地方創生担当相(73)などの名が挙げられる。

さらに、小選挙区で敗れ、惜敗率も上位でなかったため比例復活もなかった有力議員としては、石原伸晃元環境相・党幹事長(64)、平野博文立憲民主党代表代行(72)、辻元清美・立憲民主党副代表(61)などがいる。

なお、小選挙区で敗れたが比例で復活した有力政治家として、甘利明幹事長(72)、桜田義孝元五輪相(71)、立憲民主党の小沢一郎議員(79)などの名も付言しておこう。小沢一郎議員は自民党にいたら定年制で比例復活できなかったところである。

引退や落選で消えた有力議員は、括弧書きの年齢を見る通り、高齢のケースが多く、これが、世代交代や若返りの印象を与えていると思う。

確かに、衆院選の新人当選者は97人であり、前回の56人を大幅に上回った。また、衆議院議員の平均年齢については、解散直前の59.0歳から今回の当選者は55.5歳になった。

しかし、2017年の前回衆院選の当選時の平均年齢(54.7歳)からは、実は、今回わずかに上がっている。前回の選挙から4年も経っており議員もそれだけ年齢を加えていただけだったのである。

図表1には、前回と今回の衆院選の当選者の政党別平均年齢を示した。前回からの変化を計算すると、合計で+0.8歳(54.7→55.5)、自民党は+1.3歳(55.6→56.9)、公明党は-0.1歳(56.5→56.4)であるが、野党の立憲民主党は+1.2歳(53.5→54.7)、共産党は+4.8歳(57.5→62.3)と野党もかなり年齢が上がっている点が印象的である。

ちなみに、平均年齢が最も高かった共産党は今回衆院選当選者10人のうち最高齢の穀田恵二氏(74)を含め70代が2人、60代が委員長の志位和夫氏(67)を含め5人、50代が1人、40代が2人だった。

与野党ともにメンバーの入れ替えはかなり進んでいるにせよ、若返りが進んだとは言えない状況である。目立って平均年齢が下がったのは今回躍進した日本維新の会の-0.9歳(50.3→49.4)だけである。

なお、今回の衆院選では、このように年齢的な若返りがあまり進まなかった上に、女性進出も振るわなかった。今回の当選者の女性比率は、前回の10.1%から9.7%へとむしろ低下しているのである。