ニューヨークでは無法地帯化した店舗も
たとえ最先端の防犯機器を導入しても、機械が被疑者を捕まえてくれるわけではないので、万引き被害が激減することはない。かといって、人的警備を厚くする予算もないため被害を減らせる要素は乏しく、万策尽きた感が漂う。
昨今、小さな間違いや当たり前のことを他人に指摘されることで、無駄に大声を出して、乱暴な態度をとってしまう人が増えているように感じるのは気のせいだろうか。隠匿行為を確認できた時点で指摘して、犯罪者に仕立て上げることなくやめさせたいところではあるが、店内で声をかければ「客を疑うのか」と大騒ぎされること必至で犯意成立まで見守るほかない。
現在、アメリカNY州にある一部のドラッグストアにおいては、高額品のみならず、歯ブラシや歯磨き粉まで施錠販売されている。あちらでも環境保護を理由にレジ袋が有料化され、近しいタイミングでコロナによる貧困者が増えたことから、万引き被害が急増。ほとんどの商品棚が施錠され、呼び鈴を押して従業員を呼ばなければ、商品を手に取ることすらできなくなった。
盗る側は刑務所入りを志願している側面があるのに、軽犯罪を理由に警察が扱おうとしないため、警備員の前でも堂々と商品を詰め込むなど、もはや無法地帯化してしまった店まである。現場の映像を見て、この先の世界が不安になったことは言うまでもないだろう。
万引きを許容していれば日本の治安も悪化の一途
日本国内においても、捕捉現場の所轄警察署によって万引きの対応は異なり、被疑者の扱いに地域格差のようなものを感じることは少なくない。似たような環境で、同じような犯歴を有する人が、まるで同じものを盗んで捕捉されたとしても、その結末は異なるのだ。
どことは言えないが、これまで長年にわたり数百人の万引き犯を引き渡してきたにもかかわらず、いまだ一度も行ったことのない警察署も存在する。この事実は、関わった事案の被疑者が書類送検されていないことを示しており、うがった言い方をすれば万引きが許容された街のように思えてくる。
こちらからすれば手間がかからずに済んで助かる側面もあるが、犯行現場から生じる犯罪格差には大きな疑問を抱かざるを得ず、こうした街の存在が国全体の治安悪化を招く気がしてならない。
近い将来、日本の商店も、米国のドラッグストアと同じような状況に陥ってしまうのではないだろうか。商品を自由に手に取り選べる環境の崩壊は、買い物の楽しみを奪う悲惨な結果で、そのような事態は極力避けたい。
万引きを減らすには、どうしたらいいか。各地のさまざまな現場に潜入しつつ、今後も検討を続けていこうと思う。