コロナ禍で悪質、常習化する万引き

レジ袋有料化とコロナ禍における困窮者の増加に合わせて初犯者の扱いが増えていることも確かで、失業や収入減を理由に換金目的の万引きに手を染める若い主婦や家族万引きの捕捉も多発している。ジャンルを問わず、比較的高価で人気のある売れ筋商品を盗み、リサイクルショップやオークションサイトなどで換金するケースが典型パターンといえるだろう。

事情聴取時に机に並べられた大量の商品
入店早々、特大サイズのレジ袋を手に取り、商品を詰めて店外に持ち出した40代女性。何も買っていないため、盗みに来たと考えられる犯行だ

犯行に用いるバッグの大きさやカゴの数に合わせて、ブツ(被害品のこと)量は増す。捕まえてみれば高額品や大量の商品を盗む被疑者ほど、なにひとつ買っていない場合が多く、その厚かましさを痛感するばかりだ。大量の商品を常習的に持ち出すなど、犯意が育ちきったところで逮捕に至れば、被害状況から長期拘留を余儀なくされ、全てを失うような展開を招いてしまう被疑者も珍しくない。

万引きする人の多くは、客のフリをしながら店内を徘徊はいかいして犯行に至り、あたかも精算を済ませたような顔で未精算の商品を店外に持ち出していく。被害を放置すれば常習者の標的となり、成功体験に合わせて犯罪技術を向上させてしまうことにもつながる。万引きを生業とするような常習者も増加傾向にあり、大量かつ高額の万引き被害が全国で相次いでいる状況だ。

お金を払いたくない万引き犯には罰金が科される

たかが万引きと思われがちだが、10年以下の懲役に併せて、50万円以下の罰金という財産刑も制定されている。罰金刑の存在を知らないまま捕まり、罰金を支払ったことで金がなくなったと報復的万引き行為に及んだ再犯者を捕らえた時には、経験豊富であるはずの私も言葉を失ったものだ。

机に顔を伏せる男性
マイバッグにチューハイを隠した30代男性。派遣切りに遭って収入が途絶えてしまい、酒を買う余裕がなかったと話した

ここ数年、どこのお店に入っても万引き被害が増えたと実感されているようで、いかに防止するかということに頭を悩ませている。高齢者や失業者による犯行をはじめ、摂食障害を主張する人や経営難を抱える飲食店主、ベトナム人グループなどによる大量盗難は相変わらず頻発しており、従業員による内部不正も絶えない。

窃盗団に狙われてしまえば、系列店舗が軒並みやられて、多額の被害が生じる。摘発は最大の抑止といわれているが、共犯を伴う組織的万引きや外国人窃盗団などによる換金目的の万引きは、プロの犯罪者によって構成されているに近しく、そう簡単には解決できない。隠匿行為などの実行現場を目撃したとしても、捕まえることのリスクを鑑みて、不本意ながら見て見ぬふりをする商店まで存在する。