リベラル的な問題意識は国民大多数の関心事からは程遠い
さらには、エネルギー政策で電力供給価格が引き上げられ極端な国内産業への負担が増すとみられる再生エネルギーに根拠なく前のめりの姿勢を示す政策を打ち出す立憲民主党や共産党への協力は見送る動きが顕著になってくると、来年夏の参議院選挙を前に国民民主党を受け皿とする枠組みへの変更や、ダイレクトに自民党や公明党に協力する労働組合が出てくる可能性も否定できません。
そうなると、野党共闘は結果的に連合の不倶戴天の敵であった共産党(全労連)との協力体制構築を踏み絵として連合に踏ませる仕組みとなり、連合会長の芳野友子さんが「連合の組合員の票が行き場を失った。受け入れられない」と野党共闘を批判したのも、またひとつの議論の呼び水になるのではないかと思います。
翻れば、労働組合は長らく日本の左翼界隈を支え、「Jリベラル」と呼ばれるような独自の社会理念を掲げて活動をしてきた部分があり、今回の立憲民主党の掲げる主要なアジェンダから見ても、上位に「ジェンダー平等」や「日本学術会議で政府に入会を否定された6人の問題」と「入管で亡くなられたウィシュマさんへの対応」なども盛り込み、政府を強く批判しています。
しかしながら、これらの論点は当事者にとってはまさに死活問題と言えるものながら、日本全体での政治の行く先を占う国政選挙においては国民大多数の関心事からは程遠く、そればかりか「そもそもそういう男女参画のような政策主張をする政党を労働組合がなぜ組織的に支えなければならないのか」という問題については整合性が取れません。
福祉政策で与党と政策論争をするべきだった
それであれば、労働組合として労働政策の合理化やセーフティネットの拡充とともに非正規雇用で働く人たちやフリーランス、個人事業主といった多様化する働き方の人たちにも保護の翼を広げて日本で働くすべての日本人にふさわしい社会保障を求める政策を実現するほうが理にかなっています。
そのような国民の働きやすくする経済にするための保障を拡充する福祉には財源が必要で、政策の対立軸として本来、野党共闘路線は「高負担高福祉」か「低負担低福祉」かいずれかの政策を主張し、与党岸田政権と政策論争を仕掛けなければならない立場であったはずです。
実際には、国民のアンケートでは評価が二分する消費税減税(または廃止)を叫ぶ野党共闘が、党首討論で「財源は?」と突っ込まれた際に大企業から巻き上げるのだという話をしていましたが、そもそも彼らの支持母体とはそういう大企業やその系列、取引先で働く労働者で構成される労働組合であり、彼らに支えられて選挙を戦ってきたのだということを忘れています。
野党の支持率低迷により浮動票頼みとなり、その無党派層が維新の出現によって分散して慌てふためいて勝てる選挙で大物議員の落選を出してしまった今回の立憲民主党は、浮動票を求めて短期的な共産党との協力体制を築くことだけでなく、立憲民主党に投票したいと思える支持者をいかに増やすかが本当の命題であったと思われます。