アフガンの伝統的な家父長制には注意が必要
タリバンは女子教育を否定していない。二次性徴以後も男女が同じ教室で学ぶことや男女共修の体育といった欧米的な教育をアフガニスタンに持ち込むことを拒否しているのである。
イスラムには、女性に学問はいらないという教えなどない。女性の医師や教師が必要なことは、タリバンに限らず、皆、分かっている。イスラムは異性に肌を見せることを強く戒めている。従って、女性が病気になったときに診察するのは女性の医師でなければならない。
すべての女性のための高等教育が必要なことは言うまでもない。タリバンはもちろん女性医師や女性教員の必要性についても十分理解している。問題は、そのための人材養成とインフラを整えるのに資金と時間が必要だという点にある。それを措置しなかったのは、20年にわたる前政権の問題であって、政権樹立から数カ月のタリバンの責任ではない。
重大な問題は、イスラムに従おうとするタリバンよりも、伝統的なアフガン社会の家父長制にある。イスラムにも家父長的な要素は強いから、両者が結びついてしまうと女子教育など必要ないという方向に流れてしまう。日本が教育支援で、タリバンに強く言い聞かせなければならないのは、この点なのである。
世界は一刻も早くタリバン政権のアフガンを承認すべき
欧米や日本のジャーナリズムに欠けているのは、タリバンの非人道性を言い立てるだけで、深刻な貧困に直面する多くのアフガン人の救済に目を向けないことである。
一つ明確にしておきたい。いくらタリバンが気に入らないにしても、二度と、戦争でタリバンを政権から追放することはできない。アメリカにも同盟国にも、当然のことながら、その気はない。
そうだとするならば、タリバンのアフガニスタン・イスラム首長国を承認し、一刻も早く、あらゆる人道援助を再開しなければならない。人道危機を指摘しながら、「問題はタリバンの態度だ」と書いた日本の新聞がある。タリバンにあらゆる勢力を糾合した政権樹立を求め、女子教育を再開していないと批判するのである。この論調は、戦いに敗れて撤退した欧米諸国のマスコミと同じである。
だが、アメリカやヨーロッパ、それにオーストラリアなどの西欧諸国は、軍事力を行使して失敗し、タリバンに敗れて撤退した側である。それを認めたくないから、どうしても相手を悪魔化しようとする。日本のジャーナリストは、その点を考えて報じるべきである。
国民の多くを極貧の状態に追いやったのはタリバンの政権ではない。20年も統治した傀儡政権と欧米諸国の責任である。だからこそ、世界銀行やアメリカが資金凍結を解除してアフガン新政府に資金を渡すのが先なのである。有力な軍閥の長や前政権の幹部から、不正に蓄財した財産を没収しなければならない。
こういう困難な状況にある新政権に、偉そうに意見するのは、高いところからムスリムであるアフガン人を見下ろすのと変わらない。そして、この種の言説は、西欧とイスラムとの対立をあおることにしかならないのである。