母親の長い話を機嫌を損ねず止めるには

母の話は、「今日、病院の待合室で、野村さんの奥さんに会ったのよ。野村さん、覚えてるでしょ? ほらあの」のように始まって、今日の出来事を綿密に報告してくれるのである。これに、「やんなっちゃったこと」や「多少の人生訓」がくっついて、長い長いショーが終わる。

実家を出てからは、理系(実験系)の学生で、バブル期のエンジニアで、やがて働くお母さんになった私。どこにも時間の余裕のない人生だったので、母の電話の「長さ」は、いつも悩みの種だった。母と話すこと自体は好きだったけど、なにせ長すぎる。

今は、LINEなどで、ショートコミュニケーションを重ねるスタイルが多いので、母親の話が長いことに辟易する娘は少ないのだろうか。いや、それでも、母親の「目的の分からない長い話」を、機嫌を損ねずに短く終了したい子どもたちは、ゼロではないと思う。

というわけで、母親の長い話を止める方法。

電話は「案じること」から始める

まずは、母親から電話があったとき、「うん、おれ」とか「ああ、私」とか、気の抜けた返事をしている場合じゃない。即座に「あ、お母さん。どうしたの?」「何かあった?」と聞いてあげるのである。「いつもいつも母親を案じていて、電話があったから、どきっとして心配になった」というふうに。こうすれば、娘や息子を安心させるために、母たちは、早めに用件を切り出してくれる。

母は、一度だけ「何かなきゃ、電話しちゃダメなの?」とからんできた。私が「なに言ってるの。私は、24時間365日ずっと母さんのこと思ってるから、電話があれば、まず、そのことばが浮かぶだけ。何もなければ、幸いよ」と返したら、以降、用件がないときは、「ううん、ただ、あなたの声が聞きたくて」「どうしてるかと思って」と言うようになった。

そんなときは、たわいもない話を聞かせてあげる。専業主婦一筋の母は、働く娘の日常を、まるでドラマを楽しむように楽しんでくれるから。こちらの話を聞かせる分には、こちらのペースで一段落つけられる。「明日もまたがんばるわ。じゃ、お風呂に入るね」という感じに。

テーブルの上のスマートフォンをとる手
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