昔のことを蒸し返してあれこれ言う母親や姑には、どう対処すればいいのか。脳科学・AI研究者の黒川伊保子さんは「彼女たちに悪気はなく、ただ世話を焼きたいだけ。こちらから一つだけ頼みごとをすれば満足してくれる」という――。

※本稿は、黒川伊保子『母のトリセツ』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

テーブルで休憩中の母と息子の会話
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蒸し返し癖は女性脳の大事な機能

長く生きた女には、蒸し返す癖がある。

あれは、本当に厄介である。

親戚には、必ず、このタイプのおばさんがいる。お正月に母が筑前煮を出すと必ず、「あなたがお嫁に来てすぐのころ、こんにゃくに味が染みない、どうしたらいい? って、駆け込んできたわよね。田舎育ちでうぶだったから」と蒸し返す祖母。都会育ちで、自分に絶対の自信がある人で、本人には悪気はないのだろうけど、ことばに毒がある。母はきっとそのたびに、あのとき頼らなければよかった、と悲しかったに違いない。私も、私の小さい時の所業を何十年経っても蒸し返す、母の旧知の友人が苦手だった。

長く生きた女たちのそんな癖に、誰でもうんざりさせられた経験があるから、大人になったら、母親や叔母ひいては姑に、先の蒸し返しのネタ=弱みを握らせたくないのだと思う。

素直に頼れない。その原因の一端を担っているのは「長く生きた女たちの、蒸し返し癖」である。

この蒸し返し癖、実は、女性脳の大事な機能でもある。「過去の経験を瞬時に引き出して、子どもを守る」母性の基本機能だからだ。つまり、女らしい人ほど、蒸し返す。「悪気がなくて、おせっかいで、蒸し返す」のが、女性脳の本質と言っていい。そうでないと子どもが無事に育たないからね。

長く生きた女たちのおせっかいと蒸し返し癖は、人類が続く限り、永遠に消えない。母や姑がうざいのは、人類普遍の真理と言っていい。というわけで、「よかれと思って、悪気のない、けど、どうにもうざい」母や姑にどう対処するか、である。

これはもう、率直に、NOと言うしかない。

「今は、放っておいてもらえるのがありがたい」と。