匿名ユーザーのアカウントを停止・削除してまで成し遂げたかったこと
2011年6月28日、グーグルから壮大な狙いを持ったサービスが静かに立ち上がりました。それは、グーグルプラス(Google+)と名付けられたSNS。グーグルは、かつてオーカットやグーグルウェーブ、グーグルバズなどのサービスを通じて何度もSNSへの挑戦と撤退を重ねてきましたが、それでもグーグルには諦められない理由がありました。それは「リアルな人間」のデータ取得です。
ご存知の通り、グーグルは企業がグーグルに出す広告と、その情報を欲しがるユーザーとをうまくマッチングさせることで大きな収益を得てきました。グーグルが提供するサービスが使われるほど、そのユーザーのニーズは明確になり、広告との的確なマッチングにつながる仕組みになっています。
そして、ここにグーグルがさらなるマッチングの精度向上のために必要だったのが、実名や属性情報に基づいた生身の人間の多様な情報です。グーグルは2004年にフェイスブックに数千億円で買収を持ちかけたと言われていますが、その頃からグーグルにとって、属性が明確でリアルタイムに情報を取得できるSNSは、ビジネスモデルにおける大きなミッシング・ピースだったのです。
したがって、グーグルプラスのサービスは、ツイッターなどとは異なり、実名登録が大前提でした。グーグルプラス開設当初、グーグルは匿名で利用していたユーザーのアカウントを停止・削除するという強硬手段に出ます。アカウントを停止されたユーザーにとっては、SNSだけでなくGmailやカレンダーなどが使えなくなるため、この強硬策には多くの批判が集まりましたが、グーグルにとって実名登録はマッチング精度を高めるために譲れない一線だったのです。
ただし、実名ベースのSNSとしては、当時既にフェイスブックには7億人超のユーザーがいました。いくらグーグルが大きな力を持っていたとしても、強大な競合が存在している中では厳しい戦いを強いられることは想像できます。ではその中で、グーグルプラスはどのような勝ち筋を描いていたのでしょうか。