グーグルカレンダーなどとの連携を武器に

グーグルプラスは既存のサービスとの差別化要因として、「サークル」という概念を導入しました。フェイスブックやツイッターは、フォローされてしまえば、投稿される情報は基本的にはフォロワーに等しく公開されます。そこではビジネス関係者か、プライベートの関係なのかどうかなど、フォロワーとの人間関係は考慮されません。グーグルプラスは、そんな既存のSNSの情報公開に関する使いにくさを踏まえて、「家族」や「友人」「会社の同僚」「学生時代の同期」といった違ったコミュニティの人間関係(=サークル)を自分で定義し、それぞれに情報を出し分けられるようにしたのです。

さらに、グーグルプラスには、他のプレイヤーにはないもう1つの大きな武器がありました。それは、グーグルの既存サービスの存在です。例えば、グーグルカレンダー。これは、当時から既に多くのユーザーが使用しており、もはや不可欠なアプリの1つでした。

これをグーグルプラスの機能と融合させて、スケジュール共有ツールに使うことができれば、利便性は一気に高まることが期待できました。

それ以外にも、グーグルドキュメントやスプレッドシートなど企業内で利用者を獲得しているアプリの存在もあり、グーグルプラスにはフェイスブックがリーチできていない「企業内SNS」というポジション確立の可能性もありました。

既存のグーグルのサービスを横断でつなげる

さらに、グーグルプラスの共同責任者でありグーグルの副社長でもあったブラッドリー・ホロウィッツが、「グーグルプラスは、すなわちグーグルだ」と語るように、グーグルプラスとグーグルの検索機能の融合も進められます。例えばグーグル上である企業名を検索した際、もしその企業がグーグルプラスでページを持っていれば、そのグーグルプラスのページも検索結果として表示されるのです。グーグルプラスやグーグルプラスのページから投稿した記事には、一つひとつに固有のURLが割り当てられ、通常のウェブのページと同様に扱われます。ユーザーはグーグルプラスに積極的に投稿し、さらにグーグルプラス内で「+1」ボタン(=フェイスブックでいう「いいね!」)を多く獲得することができれば、検索ユーザーに対してコンテンツを効率よく訴求することができるのです。

このように、グーグルの人気アプリにとって、グーグルプラスがもたらすソーシャル連携や属性情報の高解像度化、そして広告マッチング精度の向上は、さらに大きな魅力になるのです。

ホロウィッツは、2011年11月、日経新聞のインタビューに際して、グーグルプラスを「プロダクト」とは呼ばずに例外的に「プロジェクト」と呼んでいることについて、こう語っています。

「当社にはネット検索、ファイナンス、メールサービスなど様々なプロダクトがあるが、プロダクトは他のプロダクトから独立して存在している。一方、グーグルプラスはプロジェクトとして、グーグルが手がける全てのプロダクトと関わりを持ち、より大きな意味がある」

つまり、グーグルプラスは既存のグーグルのサービスを横断でつなげるという使命を持った、グーグルにとって極めて野心的なサービスだったのです。