実名ポリシーを破棄し、さらには謝罪も

しかし、この各種連携強化の施策増加に反比例するように、グーグルプラスのユーザーの投稿量は減り始めます。月間アクティブユーザー(グーグルプラスに1カ月で一度でも投稿する人)が全世界で400万〜600万人という結果は、フェイスブックが日本だけでも2000万人を軽く超えることを考えると、かなり低い数字でした。

グーグルはこの状況を踏まえ、グーグルプラスの方針を大きく変更せざるを得ませんでした。2014年7月、実名ポリシーを放棄。さらに、ユーザーに対して実名を強制したことを「当社の命名方針が不明瞭であり、そのために一部のユーザーが不必要に困難な体験をする結果になったことも認識している。これについて当社は陳謝する」と、正式に謝罪をします。さらに、2015年7月にはユーチューブとグーグルプラスのアカウント統合も解除しました。

これは、グーグルとして、グーグルプラスの不振の影響を限定的にとどめておくという判断であり、「グーグルプラスはグーグルである」という当初のソーシャル連動型の戦略を諦め、グーグルプラスを切り離す決定をしたということです。

個人情報の管理体制に不備があったことが「とどめ」に

そして、結果的に死に体として残されたグーグルプラスにとどめを刺す事件が2018年10月に訪れます。それは個人情報の管理体制の問題がウォール・ストリート・ジャーナルの記事により発覚したのです。

記事によれば、2015年に個人向けのグーグルプラスで不具合が生じ、外部のソフトウエア開発会社がサービス内の個人情報にアクセスできるようになっていました。対象はユーザーの名前や住所、メールアドレス、職業、性別、年齢で、人数は最大で約50万人分に上りました。外部企業が個人情報を不正利用した形跡はないとしているものの、3年以上の期間、その状態が放置されていたことに対して非難が集まります。グーグルはその事実を公に認めるとともに、グーグルプラスの閉鎖の方針を明らかにします。

結果的に、グーグルプラスは2019年4月に閉鎖され、8年弱の歴史に幕を閉じます。

グーグルにとって大きな可能性を秘めたソーシャル化へのチャレンジは、またもや撤退という形で終わったのです。

グーグルプラスはなぜ失敗したのでしょうか。それを考えるためには、SNSでうまくいったわずかばかりの成功事例を考えてみるとヒントがあるのかもしれません。

例えばフェイスブック、ツイッター、インスタグラム。これらのSNSは全て開始時点ではスタートアップによるサービスであり、最初は限定的なユーザーが楽しみながら活用し、ユーザーが使い方を見出しながら徐々に大きくなってきたという歴史があります。