東京都調布市にあるドルトン東京学園は、河合塾が経営する中高一貫校だ。2019年に開校した。初年度納付金は148万円で東京都の私立中学校の平均を上回るのにもかかわらず、偏差値は難関校の粋に達している。どんな教育をしているのか。子育て・教育ナビゲーターの中曽根陽子さんが取材した――。
東京都調布市にあるドルトン東京学園
筆者撮影
東京都調布市にあるドルトン東京学園

詰め込み型教育への問題意識から生まれた教育メソッド

ドルトン東京学園は、2019年に東京都調布市に開校した新設校です。初年度から注目を集め、2021年度の予想偏差値は男子54~64、女子55~64(首都圏模試調べ)に達しています。

同校は文字通り、ドルトンプランを取り入れた国内唯一の中高一貫校です。

ドルトンプランは、今からおよそ100年前に、米国の教育家ヘレン・パーカーストによって提唱された、学習者中心の教育メソッドです。画一的で型にはめようとする教育のスタイルから、子供の関心や感動を中心に、より自由で生き生きとした教育体験の創造を目指そうとする自由教育として、当時ブームとなりました。しかし、いわゆる目に見える学力が身につかないという批判や軍国主義に傾く世論に押されて、その思想が根付くことはありませんでした。

それが100年たった今、ドルトン東京学園が開校したことで、再び注目されています。しかも、経営母体は河合塾です。河合塾と言えば、大学受験の大手予備校として、これまでの教育システムを支えてきた側のはず。なぜ今、学習者主体のドルトンプランを取り入れた学校を作ったのでしょうか。

そこで2020年から校長を務める荒木貴之さんに、21世紀にドルトンプランを取り入れた学校が作られた理由やこの学校が目指す教育、この学校で何を実現していきたいのかを聞きました。

「学びに没頭している子供の環境を重視する」という共通点

なぜ、河合塾が最先端に振り切った教育へチャレンジしているドルトン東京学園を作ったのでしょうか。それは、5年後・10年後が予測できない変化の時代だからです。

荒木校長はこう話します。

「学校教育は、時代の最先端を意識しなければなりません。本校で学ぶ生徒たちが社会に出るとき、テクノロジーは今よりずっと発展していることでしょう。中学・高校という成長が著しい時期に、固定化された教育メソッドではなく、新しい手法やツールを積極的に取り入れた、個別最適化された学びを体験している必要があります」

河合塾とドルトンプランのつながりは、幼児教育から始まっています。河合塾は1970年に、2才から12才までの幼児・児童の知能開発を目的として、ドルトン教育を実践する英才教育研究所を開設しました。その後アメリカのドルトンスクールと提携し、名古屋と東京で、幼児教育の教室と小学生のアフタースクール事業を展開しています。中高の開設は、先代理事長の夢だったとか。

「ドルトンプランは、学びに没頭している子供の環境を整えることを大事にしているのですが、その辺りの考え方は、河合塾と一致しているところかもしれません」(荒木校長)