1つは、身体能力が弱っていても支援を受けていないということ。もう1つは、医師や介護の専門職による情報提供不足や介護に関する社会的インフラが整っていないなどの理由から、介護による支援を受けていても、支援のやり方などが間違っていて、結局、身体機能の改善が見られず、外出もできないまま、徐々に歩けなくなっていくということです。

これらが「道路を渡れない老人たち」を生み出す大きな要因なのです。

介護の持つ負のイメージを払拭した先に幸せは訪れる

なぜ、身体能力が弱っていても、支援を受けないのでしょうか。それには、介護の持つイメージが影響しているのではないかと考えています。皆さんは、介護という言葉を聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。

私もいろいろと周りの方々に聞いてみると、お風呂に1人で入れなくなった人の介助をする、排泄の処理をする、食事の世話をするなど、どこか大変そうで暗いイメージばかりが先行しています。

さらにいえば、介護についてはあまりメディアも取り上げないですし、取り上げるとしても、介護離職で親の年金で暮らす人や介護離婚をして困っている人、老老介護で疲れ切った人、といった極端な場面ばかりです。

車椅子を押すヘルパー
写真=iStock.com/kazoka30
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もちろん、そのような状況があることを伝えて、危機感をあおることはとても大切なのですが、マイナスなイメージを抱くような内容があまりにも多いように感じます。介護にプラスのイメージを少しでも抱けるようなメッセージを伝えている番組は、ほとんど見たことがありません。

介護による支援はお風呂の介助、排泄の処理といったようなものだけではありません。もっと前の段階から、日常生活に支障をきたしはじめたあたりから、受けられるものなのです。

それなのに、介護支援に関して、マイナスなどこか暗いイメージしかないため、できれば考えたくないこと、どこか忌むべきものというイメージを抱く方が、特に男性に多いのです。

これだと、介護に対して、苦手意識を抱き、考えたくないと思ってしまうのも無理もありません。

親と介護の話をしよう

親に介護の話をすると、「そんなに俺は衰えていない」とか「そんな縁起の悪い話をするな」などと言われたという話をよく聞きます。

また、「両親はまだ若いし介護なんて考えなくていい」と家族が考えて、ほうっておいたり、家族に迷惑がかかるから言わないでおこうと考え、生活に不自由さを感じても、なんとかなるからと、本人が何も言わなかったりします。