この2人から学ぶべき第二の教訓は、垂直統合戦略の功罪である。2人はともに垂直統合の戦略をとった。新しい商品に必要な部品が世の中に存在しなかったために、自分たちで作るか、自分たちのイニシアティブで外注するしかなかった。先駆者は垂直統合せざるをえないのである。
それ以外に、垂直統合にはメリットもある。フォードの場合、垂直統合をすることによって、さらなるコストダウンが可能になるという目算もあった。ジョブズの場合、垂直統合のメリットとして、パーツ・レベルの独自性が、製品の独自性をもたらした。
しかし、この垂直統合が2人の挫折の共通の原因となっている。任天堂の場合も同様である。垂直統合戦略の弱点は、競争原理が利用できないために外部のイノベーションを取り込むことができない点と独占の弊害が生じる点である。自分たちのアイデアと能力だけでパーツを進化させていくよりは、外部の頭脳と能力を使ったほうが効果的である。
最初は垂直統合が独自能力となっても、上流工程への参入が進むにつれ、独自性は失われる。それどころか、外部の知恵と能力を取り入れることができないために、製品の魅力が低下してしまう。垂直統合が弱点となるのは先駆的イノベーターの宿命ともいえるのである。
日本の電機産業を見ても、先駆的企業は垂直統合戦略をとる例が多かった。部品やパーツが手に入らなかったために内製化せざるをえなかったからである。
※すべて雑誌掲載当時