未来に直面するであろう「3つのリスク」
さて、このように目下経営が絶好調のシャトレーゼですが、死角はないのでしょうか。私も未来予測専門の経営コンサルタントなので、シャトレーゼが未来に直面するであろう3つのリスクについて予測してみたいと思います。
①YATSUDOKIビジネスモデルの不成立
最初にお断りしておきますと私はシャトレーゼの都心新業態であるYATSUDOKIの商品は大好きです。たぶんシャトレーゼよりも気に入っています。なにしろおいしいのです。
先日も山梨産とおぼしきシャインマスカットがふんだんに使われたホールケーキを、2600円で買って帰ったのですが、とにかくお得です。上の部分だけでなく2層目の生クリームの中にもシャインマスカットがふんだんに挟まれているうえに、生クリームは「タカナシでいえば35ではなくおそらく47の方で間違いない」と思えるくらい濃厚なものを使っています。普通の洋菓子店なら2600円というのは原価じゃないかと思うぐらいの商品です。
もともとシャトレーゼは店舗コストが低い郊外ロードサイドで成立する業態だったため、都心部の居住者から出店を望む声が大きかったようです。
とはいえ都心部でシャトレーゼモデルだとコスト的に難しい。そこでワンランク上の高級感を出したお菓子の新業態で勝負しようというのが、このYATSUDOKI業態です。銀座を皮切りに自由が丘、新宿御苑など都心部に展開を始め、少なくとも2019年から直近まで経営は順調のようです。
強力なライバル「セブン‐イレブン」
しかし私の目には「このYATSUDOKIビジネスモデルは成立しないのではないか」と思えて仕方ありません。理由は本来のシャトレーゼの優位性が生かされないリスクがあるからです。
おいしいものを安く作るのがシャトレーゼの強みです。本来、都心部で別ビジネスモデルをするとしたら、論理的にはどのようなターゲットがありうるでしょう?
A.富裕層から見ておいしい
B.中流層から見て安くておいしい、庶民にとっての贅沢
このどちらかでしょう。都内の高級洋菓子店は基本的にAがターゲットですがそこはシャトレーゼが選んでいない様子です。論理的にはBということですが、そこには強力なライバルがいます。セブン‐イレブンです。
シャトレーゼが「庶民にとって安くておいしい」だとすれば、セブンプレミアムのお菓子、たとえば博多通りもんジェネリックと呼ばれる「ミルク餡まん」や銀のぶどうの「シュガーバターの木」は「中流にとって安くておいしい」「庶民の贅沢商品」として成功しています。過去20年間のセブン‐イレブンの研鑽で、この市場に非常に強力な優位性が築かれてきました。