地域産業として「連邦制経営」を採用

さらには合併した企業を運営する方法としては、設立した地域会社に任せる「連邦制経営」というものを採用。連邦制経営の妙は、小売業は「地域産業である」という理念のもと、地域のことは合併した企業のトップ、またはその従業員に任せた。

それが一層、全国の同業小売業から多くの賛同者を得た。そして一挙に全国展開にのりだしたのである。

つまり集中するメリット、規模の経済による仕入れコスト削減、人材と資金の集中をはかることで、より安価に、安定して、お客様によいものを届けることを目指してきた。

こういった岡田の政策の数々は、すべて家訓の「大黒柱に車をつけよ」「店は客のためにある」の実践的な応用である。

1996年の時点で「インターネット時代への対応」を重視

1996年に受けたインタビューで岡田卓也は、「次に大黒柱に車をつけるのは、インターネット時代への対応だ」と答えている。

東海友和『イオンを創った男』(プレジデント社)
東海友和『イオンを創った男』(プレジデント社)

実際に、ITの進化で、距離的・時間的・金銭的なコストはもはや過去のものとなった。ほとんど気にかけなくともよいくらい低減された。その結果、企業でなくとも個人が、全国、あるいは世界にむけて、商品やサービスを提供することが可能になった。

そして市場というかたまりではなくして、個人へ直接のアプローチが可能になった。仮に素人であっても、店舗といった存在すらなくても、商人となりえる世界になった。

こういった、新しいチャネルの登場によって、「顧客とは誰か」ということすら変えてしまいつつある。

過去において衰退没落した企業に共通しているのは、「顧客を見失った企業」「世の中の変化に適応できなかった企業」「大きな変化の潮流と小さなインシデントに気付かなかった企業」「顧客志向と言いながら実はわが社志向に陥った企業」等、いずれも企業組織の神経系統がマヒした企業であると言える。

思い切った改革を行わなければ、企業は必ず衰退する――。

岡田卓也が、もしいま現役であったなら、いったいどういった革新を行ったであろうか。

おそらく、「大黒柱に車をつけて」また新しい何かを創り出しているに違いない。

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