「業界」よりは「仕事内容」で考える
驚くことに、ゲーム動画をAIに見せると、そのゲームに近いものをつくってしまうそうです。ということは、AIにスーパーのレジ打ちの様子を見せれば、それができる未来もいずれやってくるでしょう。
パイロットの操縦を見せて学ばせれば、飛行機の離着陸もできるようになる可能性だってあります。「まさか、あの人気職業が……」と思われるような仕事が、10年後にはすっかりなくなっているということが間違いなく起きます。
スーパー業界は残るけれど、レジという仕事はなくなる。航空業界は残るけれど、パイロットという仕事はなくなる。つまり、どのような業界であっても、AIに代替させられる作業とそうではない作業があるということです。
たとえば、出版社なら文字校正とか写真の修正などは人間でなくAIができるようになるでしょう。ただ、偏屈な作家とお酒を飲みながら、執筆依頼をすることはAIではできません。
このように、人間同士のコミュニケーションを必要とする仕事はAIに駆逐されにくいのです。
ただし、コミュニケーションといっても、商品の注文などマニュアル化できるような簡単なやりとりは別です。
すでに、ピザ屋の注文をするくらいのコミュニケーション能力を持つ「ヒトシステム」をグーグルが公開しています。定型化したやりとりが中心の仕事はAIが担うようになるでしょう。
機械のために働く、SFのような未来
よく、機械が人間の仕事を代替してくれるから、僕らは遊んで暮らせるようになると語る人がいます。
これは間違いではありませんが、機械に仕事をさせることができるのはごく一部の人だけです。それ以外の人は逆に「機械に仕事をさせられる」未来がやってきます。
「reCAPTCHA(リキャプチャ)」という機能を知っているでしょうか。reCAPTCHAはグーグルが提供するセキュリティサービスで、ボットによる不正アクセスからウェブサイトを守ってくれます。
「○○の画像をすべて選択してください」という画像認証など、ネットを使う人なら一度は目にしたことがあると思います。
これを自動で通り抜ける「2Captcha」というサービスをロシア人が開発したことが話題になりました。このサービスを使うと、reCAPTCHAのセキュリティを突破できるので、たとえばツイッターのアカウントをいくつでもつくることができます。
これだけ聞くと、すべてプログラムで自動化されているのかと思いますが、実は、人が1件1件、入力作業を行っているのです。まさにプログラムのために人間が働かされている状態です。
今後はこうした仕事がどんどん増えていくでしょう。機械に任せて遊んで暮らすどころか、機械のために働く、SFのような未来がやってくるのです。