業界の常識から外れたブランドの販売戦略

そんな中にあって、半年という枠組みにとわれずに商品を出すブランドが出てきている。

「foufou(フーフー)」はDtoC(Direct to Consumer)ブランドとして、「健康的な消費のために、最高でなくても最適な服を作る」というテーマのもと、「良い意味での消費が社会の循環を担っていく」という思いをビジネスとして実践してきた。インスタグラムで毎月数点の新商品を発表し、生産や値段の背景も含めて説明をする。店舗や賃料、販売といったところにかけていたコストを、純粋にモノ作りにかける。定価で売り切れる量だけを生産してセールしないという方針を貫き、着実に顧客をとらえている。

あるいは「mina perhonen(ミナ・ペルホネン)」や「YAECA(ヤエカ)」といったブランドは、以前から半年という枠組みに縛られることなく、シーズンを越えた服の販売を続け、ファンがしっかりと付いてきている。作り手が手間暇と愛情を込めて作ったものは、使い手にとっても価値あるものであり、それを伝えていくことがブランドの役割のひとつととらえ、ビジネスとして成立させてきたのだ。

「100% ORGANIC」のタグがついている服
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

消費者がお金を使うハードルは上がっている

このように、サイクルの見直し一つとっても表面的な改変ではなく、ブランドが抱いている志や思いを発信し、消費者の共感や応援を得て、ファンになってもらうことも大切だ。

消費者は、商品そのものだけでなく、その背後にある志や思いといったものに賛同して購入する傾向を強めている。ある人は地球環境に配慮しているかを重視し、ある人は日常を豊かにしてくれるものかどうかを重視する。

手に入れて身につけることで、その姿勢を表現する。そこに確かな物欲は存在する。これからの消費において、そういう意識が芽生えていることを勘案する必要もあると思う。「どのブランドにお金を使うのか」の選別は、むしろ厳しくなってきているのだ。