半年ごとに商品総入れ替えが常識だった

都心の商業施設を巡っていても、閑散としているところもあれば、賑わっているところもある。人が入っているショップでは、楽しそうに服を選んでいるお客の姿を見かける。

こういった事実を鑑みると、私たち消費者の物欲はなくなっているのではなく、物欲のあり方が変わっているのだと思った。それに気づかず、あるいは気づきながら対処していないところには、お客が集まらなくなっている。逆に対処策を俊敏に打っているところは成果が出ている。今、ブランドの舵をどう切るかが問われていると言っても過言ではない。

時勢や物欲のあり方の変化に即して企業(ブランド)が変わろうとしたとき、成否を分けるのは何なのか——大きな課題は、商品とお金と価値の“適正な循環”を見直すことだ。アパレルは、半年をワンサイクルとした仕組みが、長年にわたって続けられてきた。春夏物、秋冬物という謳い文句がよく使われるのは、このサイクルに基づいている。

これを牽引しているのは“トレンド=流行”の存在だ。「今シーズンはグリーンが主役」、「この冬はたっぷりしたシルエットのコートで」といった謳い文句のもと、最新の流行ファッションを販売することで、人々の物欲を煽り、産業としての車輪を回してきた。つまり、ほとんどすべての商品を、半年サイクルで入れ替えるのが業界の常識だったのだ。

ファッションマガジン
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今の消費者が業界発の“流行”より重視するもの

2018年、「バーバリー」が売れ残りを焼却したことが報じられて物議を醸した。半年ごとに新商品を出し、季節の終わりにセールで半値あるいはそれ以下にする。それでも売れ残った商品は、焼却処分も含めて廃棄する——。こうした業界の裏事情について、消費者が知るところとなり、時代に合ったシステムではないと突きつけたのだ。

買い手である消費者にとって、流行の服を半年で着倒し、次のシーズンにまた新品を身に着けるというバブル期の感覚は既にない。むしろ、気に入ったものを長きにわたって身につけたい——リーマンショックがはじけたあたりから徐々に、そういう意識は広がっていた。少し踏み込んで言えば、業界の都合による半年サイクルに、消費者はもはや意味を感じなくなっている。