商品を右から左に流すビジネスだけではない
総合商社の強みは、多種多様な業界の上流から下流まで、さまざまなビジネスをグループ内で行なっていることです。そして、多くのノウハウを蓄積してきました。
さらに、グループ会社全社でデータを取得し、得たデータをグループ内で共有することで、新たな価値やサービスを生み出していくことができます。このようなスケールの大きなデータ活用が行なえるのは、日本では総合商社をおいて他にはありません。
例えば、グループ内の小売企業のデータを分析した結果、あるアパレル商品の売上が前年に比べて大幅に伸びることが予測できたとします。そのデータを、アパレルを製造しているグループ内のメーカーや、同じくグループ内の素材を扱う部門や子会社に共有すれば、増産がスムーズに行なえるだけではなく、新たなヒット商品を生み出すことにもつながるでしょう。
商社と言うと、右から左に商品を流して稼ぐビジネスだとイメージされがちですが、自社で得たデータを活用したり、自社で新たなサービス、特に法人向けのサービスを生み出していったりするポテンシャルを秘めています。
データに弱いと自覚した伊藤忠商事が始めたこと
現在、データをうまく活用し、大きく業績を伸ばしているのは、非財閥系の伊藤忠商事です。
同社は、自分たちには総合商社としてのネットワークやノウハウはあるけれども、データの取得や分析は弱いことを真摯に受け止め、外部から取り入れようと、かなり以前から積極的にアクションを起こしていました。
例えば、シリコンバレーにオフィスを構えたのは、今から30年以上も前の1980年代です。2000年には、シリコンバレーのオフィスからの情報を踏まえた上で、実際に投資を行なうVC「伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)」を設立。ITVは、伊藤忠グループで活用が見込めそうなさまざまなドメインのベンチャー企業に積極的に投資しています。