旧態依然の人事制度のままでは世界と闘えない

多くの総合商社はDXに取り組んでいます。そのために、CDO(Chief Digital Officer)やCIO(Chief Information Officer)といったポジションを設けていますが、形だけのケースも存在します。

山本康正『2030年に勝ち残る日本企業』(PHPビジネス新書)
山本康正『2030年に勝ち残る日本企業』(PHPビジネス新書)

総合商社に限ったことではなく、日本の大企業に多く見られる特徴ですが、生え抜きの人材や派閥人事を重視するために、どうしても外部の優秀な人材を重要なポジションに就ける体制が整っていないケースもあります。

このような旧態依然の人事ではなく、外部も含めた、若くて優秀でやる気のある人材を、思い切って抜擢するべきです。どうしても給与制度に問題があるのなら、肩書きはCDOだけれども、給与は一般社員と同等に近い額に設定し、成果報酬にしてもいいでしょう。ただし、権限は与える。そのような人事制度の改革こそが重要です。

特に、AIやクラウドなどのプロジェクトの実装経験は、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏が40歳であるように、おそらく40代以下のほうが先端を経験している可能性が高い。デジタルのヘッドにおいてだけは、年齢制限を設けてもいいかもしれません。

40代女性を執行役員に据えた伊藤忠は結果が出た

実際、伊藤忠商事を見ていると、人事に関しても旧態依然の総合商社とは異なる動きが見られます。2000年には、米国のコーネル大学で法学を学んだあと、法律事務所で弁護士としてキャリアを積んでいた、茅野みつるクレア氏を招きました。2013年には大手総合商社としては初めてとなる女性の執行役員に46歳で抜擢。さらに、2017年には米国法人の経営陣の一人となりました。

多くの総合商社では、ダイバーシティやジェンダー平等というキーワードが必須になっているため、以前と比べると多くの女性やユニークな人材を採用するようにはなっています。しかし、彼女のような重要なポジションを任せたり、昇進させたりするまでにはなかなか至っていません。伊藤忠商事が、業界の中でも先駆けて何が必要なのかを考えている表れと言えます。

彼女を抜擢する際には、社内、社外、どちらからも相応の反発があったことは容易に想像できます。しかし、そのような反対意見を押さえてまで改革を進めた伊藤忠商事の経営判断が、今の成長につながっています。

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