ところが、慣れに任せていると、自動化された脳が勝手に働くだけなので、脳に新たな刺激を与えることができません。すると、使っていない脳の部分を開発することができず、結果として「新たな欲求」が生まれにくくなります。

欲求の発生と育成を妨げるいちばんの敵は「慣れ」です。「慣れ」から解放されるために、私たちは「脱・自動化」を目指さなければなりません。

「新しい経験」こそ脳が成長するチャンス

だからこそ、毎日の生活の中から「慣れ」を排除していきましょう。

「いつも同じことをしているなあ」と感じることがあれば、少し違った方法でやってみる。あえて今まで経験していなかったことに挑戦してみる。「脱・自動化」です。

現代脳科学が私たちに教えてくれることは、「人間は、脳が一生成長する生き方ができる」ということであり、その極意は、新しい経験を「チャンス」と捉えてチャレンジする、ということなのです。

40代後半を過ぎてもなお、「人生まだまだこれから」と自分に言い聞かせ、いくつになっても常に新しい経験をする。その姿勢が、みずからを若返らせ、さらには脳をイキイキとさせます。それが将来的な認知症の予防にもつながりますから、こんなに「いいこと」はありません。

「潜在能力細胞」という宝の山を生かそう

脳は一生成長する器官です。その成長のカギを握るのは、胎児のときに得た神経細胞にあります。

加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
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一般に、脳の神経細胞は40代後半には老化が始まります。ところが、私たちの脳の中には、実は生まれたときから同じ状態を保ち、使われずに眠ったままの神経細胞が山ほどあることをご存じでしょうか。私はこれを「潜在能力細胞」と呼んでいます。

「潜在能力細胞」は100歳を過ぎてもなお脳内に存在します。胎児のときに母親から受け継いだ細胞が、その間ずっと刺激を受けるのを待ち続けているのです。そして、新しい経験をしなければ、目覚めないまま放置されてしまいます。

潜在能力細胞は、まさに私たちにとって宝の山です。

40代、50代になったら、お金の財テクだけでなく、脳の中の「お宝」もしっかり運用することが必要なのです。

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