「したい」「やりたい」という欲求が脳を進化させる
脳を成長させるために必要なもの、それは、人間の「したい」「やりたい」という欲求です。
欲求がなくなると、人間は途端に衰え、老化していきます。ですから、脳の罠にハマることなく、脳が本来持つこのパワーを取り戻さなければなりません。
実際、脳のMRI画像を見ても、「◯◯したい」「××に行きたい」といった欲求があまりない人の脳は、活発な部分の範囲が徐々に狭くなり、使われている脳の回路が少なくなっていることがわかっています。
つまり、私たちは、積極的に欲求を生み出すとともに、それをうまく消化し、満足度を高めるような生活を送るように心掛けなければならないのです。
「欲求」と「情報」は比例関係にある
欲求は情報がなければ生まれません。情報が増えれば増えるほど、それに合わせてやりたいことや見たいもの、食べたいもの、行きたい場所が増えていきます。つまり、欲求と情報とは本来、比例関係にあるわけです。
ところが、今の時代は情報だけが多すぎて、脳が処理できなくなり、両者のバランスが取れなくなってしまっています。とりわけインターネットやSNSには、私たちの欲求を満たすあらゆる要素が詰まっています。
これらから発せられる情報は、目や耳を通して直接私たちの脳に飛び込んできます。そして、私たちの脳は、ニュースやゴシップ、セール情報など、いったん目の前の面白そうな情報に飛びついてしまうと、それを消費し、飽きてはまた次の「何か」を追い求めて漂流することになります。
そうして脳の使い方がどんどんアンバランスになり、脳の中に使われない部分ができてきます。その結果、脳の一部分の働きが鈍って、次々と現れる情報を情報として認識しなくなると同時に、欲求に対する「感度」が徐々に鈍っていきます。
「年齢とともに枯れる」美学は誤り
現代社会を生きる私たちは、まず自分にとって「何が本物の欲求なのか」を判断するのが難しい。子どものころから周りと同じ考え方や行動をするように教育され、自分の気持ちに正直になれず、本来あってしかるべき「正当な欲求」まで抑圧してしまっています。
ですから、あなたにとって必要な欲求、心地良い欲求、あなたの内面から湧き起こる「本物の欲求」を見極めなければなりません。
そして、それ以上に大切なのが欲求を持続させること。いくつになっても、「あこがれのスターに会いたい」とか、「エベレストに登ってみたい」など、強く願う気持ちを持ち続けている。それこそが脳を成長させる原動力となるのです。
日本ではむかしから、「枯れの美学」のような思想がありますが、脳の機能から見れば、とんでもないことです。