年功序列の会社で出世するためには「運」が必要

年功序列で流動性が低い労働市場では、結局、社内での出世も決め手がないということです。従来から言われ続けてきたことで、何が仕事の成果かを測れないため、最終学歴と「あいつはできる」という評判が大きくモノを言うし、たまたま大きな仕事に当たって成功した人間、社長などの役員受けのする仕事に巡り合った人間などが出世していきます。

能力を測る物差しがないので、結局、こういう曖昧な基準で会社人生が決まる。若者、中高年を問わず、サラリーマンならみんなこういうことをわかっているからこそ「運」という答えを選ぶのです。

これら三つのことから「成長」の意味するところをひもとくと、それは専門能力を身につけることです。企業からクビを切られそうになっても、次の会社に移っていけるだけの専門能力を積み上げることが成長だと思っているのです。

それは図表1からもわかります。日本生産性本部が新入社員に対して行った調査によると、「自分のキャリアプランに反する仕事を、我慢して続けるのは無意味だ」の質問に対して「そう思う」と回答した者の割合が6年連続増加しており、過去最高を記録しているのです。

「自分のキャリアプランに反する仕事を、我慢して続けるのは無意味だ」の割合

文科系でも医者以上に成功する可能性がある

文科系の場合、これで食えるという資格は限定されています。弁護士、公認会計士の二つが有力ですが、これら二つでさえ競争が激しくなっているのが現状です。税理士などはもっと大変でしょう。

そのため、成長を実感できる専門能力というと、資格というよりも仕事を通じて形成されていく専門能力と捉える若者が増えているのです。もちろん、専門能力の中に資格を含めて考える人も多いとは思います。まだ社会の実際を知らない学生などはそうですが、社会人になってサラリーマンとして様々な社会経験をする中で、文科系の場合、資格を取得しているというだけでメシが食えるわけではないと実感します。

その一方で、資格に実務経験と人脈が絡めば、これは医者の収入以上に大化けすることを知るのです。社会保険労務士であれ、税理士であれ、ものすごく稼いでいる人はいます。そういう人は経験豊富でサラリーマン時代の人脈で顧客を増やしたりしています。結局、営業力ということになってくるのですが、その基盤は専門性です。

若者はそういうところを確実に嗅ぎ取っていて、専門性に基づいたキャリアを求めているということであり、それが成長の具体的な姿の一つだと考えているのです。