学生にとってコンサル業界が魅力的に映る当然の理由

この点、最強なのがコンサル業界だと思います。我々バブル世代の頃からそうでしたが、昨今、東大生や京大生にコンサル業界が人気だといいます。色々と理由はあるのでしょう。年収の高さというのはいの一番に来ます。実力主義の世界ですから年齢に関係なく高額報酬が見込める。年功序列の日本企業に比べて魅力的に映るのは当然です。

オフィス ルームでの予算会議で財務計画グラフを手に説明する手元
写真=iStock.com/wutwhanfoto
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それよりも成長という観点から魅力的なのは、能力が身につくということです。情報収集能力、資料作成能力、プレゼン能力など、これこそ若者にとっては成長できる機会が沢山あるということです。しかも、専門能力を基盤にして転職しやすいというのも魅力です。仕事を通じて幅広い人脈ができますので、たとえ厳しいコンサル業界に残れなくても悲観することはない。

それどころか、コンサル出身の経営者や起業家の存在を考えると、転職することでさらなる高みを目指すことができる。

こう考えると、コンサル業界は成長の宝庫のように映る。これが若者には大きな魅力だということです。

一方、成長アピールに大失敗している業界は…

このように具体的に成長の機会があるかどうかを最も説明してこなかった業界はどこかと言うと、それは役所です。中央官庁のキャリア官僚の場合、キャリア官僚は社会的地位が高い、明治時代以来のエリートだという伝統に胡座をかいてきたのです。

中野雅至『なぜ若者は理由もなく会社を辞められるのか』(扶桑社新書)
中野雅至『なぜ若者は理由もなく会社を辞められるのか』(扶桑社新書)

その結果、現状は惨憺たるものです。政治家に首根っこを押さえつけられ、マスコミからは叩かれ、長時間労働に追われるだけで、官僚を続けたところで何もいいことはない。それにもかかわらず、自分達の職場の魅力を説明しきれていない。もしかしたら、大々的に言えるような成長機会がもはやないのかもしれませんが。

これは都道府県や市町村などの地方公務員についても言えます。公務員は安定している、身分が保障されている。これが公務員の魅力であり、これだけで人材が集まると思い込んでいるのです。転職先が豊富にある今の若者にとって、これだけでは魅力的に映りません。優秀な人材が本当に欲しいというのであれば、公務員になると身につく能力を真摯に宣伝する必要があると思います。

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