女性蔑視発言が問題化しても反省しない人たち

——日々のニュースでも、権力のある男性の女性蔑視発言が目立ちます。

作家・武田砂鉄さん
作家・武田砂鉄さん(撮影=神ノ川智早)

【武田】東京五輪組織委員会会長だった森喜朗による「女性は話が長い」という発言、そして、報道番組「サンデーモーニング」で野球解説者の張本勲がボクシングの女性選手について「女性でも殴り合い、好きな人がいるんだね。嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね」と発言した件など、同質の問題発言が続いています。いずれも本人は反省していないようで、これからも同じような発言を繰り返していくのではないでしょうか。

個別事例を問題視し、こういう女性蔑視は良くないと改善に向かわせるしかないのですが、たとえばテレビ番組では、男性芸人を中心に、「いやー、今は、こんなことも言えなくなってしまったのか」などと嘆いてみる力が強い。そこに視聴者が連帯する動きもありますが、「そもそもやるべきじゃないことをやってきた、言ってきた」と考えなければ、すぐに元どおりになってしまいますよね。

——名古屋市長の河村たかしがオリンピック選手の表敬訪問を受けたとき、彼女の金メダルを勝手にかじり、「(所属チームは)恋愛禁止か?」としつこく聞いたという事件もありました。

【武田】選手のプライベートについてしつこく聞いた件は、河村市長が金メダルをかじったからこそ明るみに出ましたが、そうでなければ、会議室の懇談の内容は話題にならなかったはず。あの発言をした時、映像を見る限り、名古屋市側も、選手を連れてきた側も、誰も市長に注意をしていなかった。そういう“おやじコミュニケーション”に対し、「なんでそういうこと言うんですか」と言わずに看過すると、同じことをします。その後の、殴り書きの謝罪文などを含め、市長の態度を見ていると、“反省して改める”という概念がありませんでした。

——特に男性は、セクハラ行為や発言を目の前にしても、なかなか目上の人には注意できないのでは?

【武田】過去に自分が言えなかったことがあるならば、次の機会に、目の前で起きた同様のことに対応するしか、方法はないですよね。こういう話をすると、セクハラと言われないために「100点満点で対応しないと駄目なんでしょ」と、すぐさま萎縮してみる人がいるんですが、改善しようという気持ちがあれば、「何も言えない、ああもう怖い」って方向には転がらないはずです。