草むしりをしていた職人がフル稼働に
当時は社屋もなく、工場の一角で仕事をしていたことから、笹木さんは一夜にして製造現場が劇変するのを目の当たりにした。それまでは職人も「たくさんつくっても余っちゃうから」と暇そうにしており、皆で工場周辺の草むしりをして時間を潰したこともあった。それが一転、つくってもつくっても足りない状態になったのだ。
自分たちの商品が世に求められるようになり、現場には意欲がみなぎった。職人にも社長にも笑顔が生まれ、自身も皆を幸せにできたこと、会社の運命を動かせたことに大きな喜びを感じたという。
5年で売り上げが100倍超
この出来事をきっかけに会社は急成長。入社時にたった数名だった従業員は5年間で約400人に増え、1億弱だった年商は115億以上にまで伸びた。工場も増設され、本社は愛知から東京へ移転。同社の躍進は今もなお続いている。
「これだけ成長できたのは、まず商品そのものがよかったから。そのことを、PRの力でたくさんの人に知ってもらえて本当にうれしかったです。それに、会社を大きくするステージはとにかく楽しかった。この経験がなかったら、自分で起業することもなかったと思います」
人の役に立ちたい、毎日全力で打ち込めるものがほしい──。子ども時代に胸に刻んだ2つの「人生の目的」を、PRという分野で見つけた笹木さん。だが、起業するまで、そして事業を軌道に乗せるまでにはさらにいくつもの壁があった。(後編に続く)
(文=辻村洋子)