会社に行けなくなった私を支えた1冊の本

しかし、その思いは早々に打ち砕かれる。新人のため担当できるのは工程のごく一部だけで、役に立ちたいという熱意は空回りするばかり。成果も思うように出せず、優秀な同期の中で自分だけが落ちこぼれていくような感覚を味わった。

3年が経つ頃にはすっかり自信をなくし、働く目的も仕事への情熱も失ってしまった。やがて会社にも行けなくなり、すがるようにして訪ねた精神科で「仕事を変えてはどうか」とアドバイスを受ける。

「同じ頃、バレーボールの故・横山友美佳選手の著書に出合ったんです。がんと戦いながら夢を追い続けた姿に励まされ、子ども時代に命を救われた自分がここで落ち込んでいる場合じゃないと。大学で転部したときのように、勇気を出して動かなきゃと思いました」

40社受けて全滅

転職を決意し、初めて「自分はどんな職に就きたいか」を真剣に考えたという笹木さん。そこで浮かんできたのが小さな会社の営業職だった。商品をたくさん売って会社が成長すれば役に立っている実感が得られるはず、そのためなら全力で頑張れるはずと考えたのだ。

とはいえ、現実は厳しかった。最終商品を扱っている小規模な会社を探して応募し続けたものの、営業未経験のためなかなか雇ってもらえない。「40社ぐらい受けて全滅でした」と笑いながら振り返る。

最終的にようやく受かったのが、当時はまだベンチャー企業だった愛知県の寝具メーカー「エアウィーヴ」だった。最初は、自分はマットレスを売る仕事に全力で打ち込めるのだろうかと迷ったそうだが、面接で「この会社を日本一にしたい」と熱く語る社長の姿に心を打たれたという。