年収が半減しても、やる気に満ちていた

「私も社長と夢を共有したいと思って入社を決めました。まだ数名の会社でしたし、大企業からベンチャーへの転職ということで年収も半分ぐらいになりましたが、全然気になりませんでした。そんなことより、やっと目標が見つかった、全力でやるぞとワクワクした気持ちでいっぱいでした。燃えていましたね」

がむしゃらに営業する日々が始まった。だが成果はいまひとつ。店頭販売をしていると、隣の有名ブランドのマットレスは「雑誌で見たから」と客がどんどん買っていく。一方、自社の商品はどんなに声を張り上げても1日1枚売れるかどうか。これほど違うのはなぜか、どうすれば隣のブランドのように売れるようになるのか──。

一夜にして会社が変わった「PRの魔法」

たどりついた結論は、エアウィーヴを「選ばれるブランド」にすること。そのためには、雑誌やテレビなどに露出して認知度や信頼度を上げていく必要があるが、広告を打つのにはお金がかかる。「だったら、お金をかけずにできる“PR活動”をしてメディアに取り上げてもらおう」。社長の発案で社内にPR広報を置くことになり、初代には笹木さんが任命された。

エアウィーヴ時代の笹木さん
エアウィーヴ時代の笹木さん。(写真提供=LITA)

経験ゼロからのスタートで、最初はメディアの人間に連絡するのもおっかなびっくりだったそう。しばらくは何の成果も出せなかったが、あきらめずにメディアに連絡をとり続けたところ、1年後にようやく努力が実った。地元のニュース番組でエアウィーヴを取り上げてもらえたのだ。

そこから少しずつ知名度が上がり、3年後にはメディアの常連に。指名買いしてくれる客が増え、スポーツ選手の間でも評判が広がり始めた。さらに上を目指してPR活動を続けた笹木さんは、やがて「魔法」を体験する。

「地元のあるTV番組で紹介され、その途端注文が殺到するようになったんです。問い合わせの電話が鳴りやまず、製造も追いつかなくて私もマットレスづくりを手伝ったぐらい(笑)。会社の運命ってPRでこんなに変わるんだと実感した瞬間でした」